一方、麻耶は、自らを緋色と名乗る青年と、公園でささやかな時を過ごしていた。
「緋色くんも…いつもこの時間まで出歩いてるの?」
二人きりになってからというもの、麻耶は頬を染めたまま、少し俯き加減であった。
話し方も、いつの間にか大人しく、潮らしいものになる。
その様子を莎夜が近場の、低めのビルから見守っていた。
「あんなのに照れてるなんて。かわいい」
呟いてると、緋色が答えるのが耳に届く。
「うん、そうだね。…どうしてそんなこと聞くの?」
不思議そうに尋ねる緋色に、麻耶は数刻前のように寂しそうに目を伏せた。
「…親とか、心配しないのかなぁって。
莎夜の家もそうみたいだしね」
「莎夜?」
「うん。さっき一緒にいた可愛い子。」
可愛い、のところで緋色がクスクスと笑い出した。
「…なにか変だった?」
「変…かな」
「え?」
麻耶が問い返す前に、緋色の方が先に動いていた。
「"魅力的"って意味で言うなら、君も"可愛い"よ」
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