Chapter 7
空は既に暗い。
しかし、人通りの比較的大きいこの駅前の広場は、電灯や信号、店の明かりで昼間と差ほど変わりないくらい明るかった。
仕事帰りのサラリーマンが改札を急ぐように通過し、部活帰りらしき学生たちは談笑しながら店内へと入る。
帰宅ラッシュで通りが慌ただしい中、そんな光景を、中央の噴水に腰掛け眺める二つの影があった。
一人は莎夜。いつもの黒の上下ではなく、同じ色のワンピースを着ていた。
もう一つは、莎夜と同い年くらいの少女。こちらは着崩した制服で、ボサボサとも見える肩までの茶髪であった。
「莎夜ぁ」
気だるそうに語尾を伸ばす喋り方が、莎夜の耳に届く。
「ねー、ホントにいーの?」
「…ん、」
それまで膝を抱え、顎を乗せていた莎夜が、顔を上げて隣の少女を見た。
「大丈夫、心配ないよ」
安心させる為に微笑んだが、制服の少女は未だ疑いの眼差しを向けたままだ。
「だぁって、莎夜の親が遅くまで外出許すなんて絶対信じらんない」
はあ、と大袈裟に溜め息を吐くと、ふてくされたように呟く。
「…アイツらは、気にしないけどさ…」
アイツら、とはこの少女の親のことを指すのだろうと、莎夜は理解する。
「そんなことないよ。きっと麻耶の親だって―」
慰める莎夜の言葉を麻耶が遮る。
「いいの。わかってる。」
無理やりに笑ってみせた麻耶を莎夜は哀しそうに、暖かく抱き締めた。
「…ありがと。」
回された腕をポンポン、と叩くと、腕が離れた。
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