色の違う、莎夜の双眸がキッとキツくなる。

怒りが心をかき乱し、今にも暴力に訴えたくなる。

それを、深呼吸をし、なんとか気持ちを抑えてから、改めて凰鬼を見据えた。

「…でも、」

ぽつりと話し始める。

「自ら殺られにくるなんて…嬉しいな」

全く嬉しくない口調で言い放つと、短剣を取り出した。

「この刻印だって、あなたが死ねば消えるんだから」

臨戦的な莎夜とは逆に、凰鬼は戦う意志を見せなかった。

「無駄だよ。君は勝てない。今までだって、そうだったからね」

それじゃあね、と無邪気に手を振ると、凰鬼は一瞬にして気配ごと消えていった。

莎夜は、その場にただ佇むだけだった。

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