「なんで俺がこんなこと…」

俺は今、学校帰りの渉の後をつけている。

それというのも数日前に浮かんだ疑惑の真相を確かめるためだ。


実は一昨日、撮影で一緒だったケイトさんにそれとなく渉の様子を聞いてみた。

渉とケイトさんは今でも仲が良く、よく連絡を取り合っているようだ。

他の男ならば許さないが、ケイトさんなら仕方がない。

俺も信頼しているし、なによりケイトさんは海外にいるという恋人に夢中だからな。

そのケイトさんによると渉は特に変わった様子はないが、約一週間前渉と恒が一緒にいるところを目撃したらしい。

ケイトさんもモデルであるから、当然恒の名前も顔も知っている。

ますます怪しくなり思いきって恒に問いつめようと連絡してみたが、何を意味しているのか全然連絡がつかなかった。

そこで最終手段として、今俺は渉の後をつけているわけだが…。

「たく、俺にこんな真似させやがって。渉の奴いったいどこに行く…」

そこで渉がある建物に入って行く姿を見て、ついでに俺の足も止まった。
渉が入って行った建物を見上げながら、俺はますますよくわからなくなっていた。

そこはそこそこ立派なたたずまいをした都内のあるホテル。

いったい渉はそこに何の用があるのか



「恒……。」



その疑問はロビーのソファーに座っている渉の前に現れた人物によって、綺麗に振り払われた。







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