どうせ俺には関係ねえよ
「ごめん成也、今日も寄る所があるんだ…」
そう言って一緒に帰ることを断られたのが今日で3回目。
「はぁ?またかよ…。たく、寄る所って何処だよ?」
いい加減堪忍袋の緒が切れそうな俺は、今日こそ渉を問い詰めるつもりだった。
「………。」
「なんだよ、言えないようなとこなのか?」
壁の方へ渉を追い詰め、逃げられないように顔の脇に手をつく。
「そ、そんなんじゃないけど…」
「俺に言えないような所で、何か疚しいことでもしてんのかよ?」
「っ疚しいことなんてしてない!」
「じゃあなんだよ、どこで何してる?」
至近距離で渉の目を見つめると、だんだん赤くなっていくのがわかった。
その様子に気分を良くし、さらに追い打ちをかけるように渉の耳元でそっと名前を呼ぶ。
「なぁ、渉?」
その瞬間、渉の肩がビクっと震えた。
こいつは俺に耳元で喋られるのにめっぽう弱いからな。
(あとひと息か?)
そう思いもう一度耳元で話しかけようと瞬間、渉の手によって口を塞がれた。
「ご、ごめん成也!後でちゃんと説明するからもうちょっと待って…。」
そう言って俺の腕からすり抜けやがった。
「……あぁ、そうかよ。じゃあ俺が女と帰ってもいいんだな?」
いつまでも口を割ろうとしない渉に完全に頭にきた俺は、そう言って背を向けた。
そんな俺の態度に焦ったのか咄嗟にシャツの袖を掴んで引き留める渉だったが、それでも何も言おうとしなかった。
そんな渉に苛立ちが募る。
「俺が誰と帰ろうがお前には関係ないだろ。」
渉とちゃんと付き合うようになってからも、俺への告白や誘いがなくなったわけではない。
ただ俺にその気がなくなったのと、こいつに余計な不安を与えたくないという、以前の俺を知る奴が聞いたら驚かれるような理由で告白も誘いも全て断っていた。
それなのに渉のこの態度だ。
(は、馬鹿らし。)
そう思い渉の手をシャツから離すと再び歩き始める。
「せ、成也…あの……」
まだ何か言おうとしている渉に今度こそ振り返らずに言った。
「別にお前が何処で何をしてようが、どうせ俺には関係ねえよ。」