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「へ〜この子が渉君かぁ!」
久しぶりに会った俺との挨拶もそこそこ、恒はさっそく今日のお目当てである渉へと視線を向ける。
「なんか今までとは違うタイプだけどいい子そうじゃん、可愛いし!」
そう言ってニコっと渉に笑顔をみせる恒に、何故かそれに照れたように俯く渉。
(おいおい渉、その反応なんだよ!?)
思わず声をあげそうになるのをなんとか堪えながら、俺は二人のやり取りを静かに聞いていた。
やり取りといっても恒が質問してはそれに渉が答えるって感じだけれど。
それでも懸命に答えようとする渉の態度に、だんだん視線が鋭くなるのは仕方ないだろう。
(こいつら初対面なのになんでこんなに打ち解けてんだよ…)
恒はわかる。
もともと社交的な性格の彼ならわかるが、普段人見知りのする渉はなんでだ?
そこでふと気付いた。
恒は渉に気を使ってか普段の数十倍は優しく、柔らかい雰囲気を醸し出している。
それはまるで渉がよく懐いている来栖ケイトのように…
それに気付いた途端、さらに機嫌が急降下するのがわかった。
(つまりああいう男が好きなのかよ…)
ついつい考えが捻くれた方へ行きかけた時、
「きゃー!成也ひっさしぶり!!」
突然上がった黄色い声に顔をあげると、そこには俺のモデル仲間達がいた。
「わり、ちょっとあいつらんとこ顔出してくるわ。」
なんとなく今はこの場にいたくなくて、俺は二人の顔も見ずに席を立った。
モデル仲間と話しながら途中ちらっと二人の方を見ると、相変わらずなにやら楽しげに話している様子。
「ちっ……。」
思わず舌打ちするとどうしたと心配されたが、それに何でもないと答えつつ視界の隅では常にあの二人をとらえていた。
(渉も渉だが、恒のあのいかにもいい兄貴って感じの態度はなんだよ…!)
もやはどちらに腹を立てているのかすらわからない。
その日は最後までこのもやもやとした気分が晴れることはなかった。