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「はぁ……。俺何やってんだろ。」
真っ赤なサンタの衣装(ミニスカバージョン)に身を包み肩まで垂れる茶髪のウィッグをなびかせながら、秋弘は今日何回目かになるため息をはいた。
周りは色とりどりのネオンで輝き、腕を組んだカップルが何組も隣を素通りしていく。
そう、今日は12月24日。
世間ではクリスマスイブと言われる日だ。
そして今年は秋弘にとっても初めて恋人と過ごす特別な日になるはずだった。
はずだったのだが…
「こら!?サボってないでちゃんと仕事しなさい!」
「……ちゃんとしてるって。」
後ろから突然叩かれた頭に手をやりながら、秋弘が振り向くとそこには仁王立ちしている姉の姿が。
「嘘ばっかり!さっきから全然声出してないじゃない。だいたいあんたが自分から手伝うって…」
「あぁぁぁわかってるよ!やりますって!!」
これ以上姉のうるさい小言を聞いていられないと、街ゆく人々のど真ん中で秋弘は声を張り上げた。
「大福、どら焼き、羊羹!ご家族や恋人、お友達へのお土産に和菓子、和菓子はいかがですか〜!!」
恋人と過ごすはずだった甘い甘いクリスマスイブを、秋弘は一人和菓子屋の看板を手にしていた。
それもサンタの衣装で女装までさせられて。
何故こんなことになったのか、と何度も頭を抱えては3日前の自分を殴り飛ばしたくなった。
「はぁ…俺の馬鹿野郎。」
そうしてまた、ため息ばかりが増えていく。