3
渉の言葉に俺は何も言葉が出なかった。
呆れたからではない。
本当に何も言葉が出てこなかった。ただ、身体が異常に熱くなっていくのだけは感じていた。
「ほ、ほらっ!だから言いたくなかったんだよ。こんな理由でカメラマンになりたいなんて、僕だってどうかしてるって思うけど、でも……っ!」
俺が何も言わないのを呆れられたと思ったのか、だんだん泣きそうになっていく渉を強く抱き寄せた。
「こんな理由とか言うなよ。」
「……え?」
「確かに他人から言わせれば怒られる理由かもしんねーけど、俺とお前にとっては立派な理由だろ?」
「せ、成也…」
渉の前髪をかきあげ、その額にそっとキスをする。
まるで誓いのキスのように。
「俺の全部お前にやるから、早く一人前になれよ?」
俺の言葉に真っ赤になりながら何度も頷いている渉に、やっといつもの渉だと感じた。
「……たく、渉のくせにこの俺に嫉妬させやがって。お前この一ヶ月俺がどんな気持ちでいたと思ってんだよ?」
「え、え?し、嫉妬?成也が!?」
何を驚いているのか目を見開いて俺を見上げてくる渉。
(まぁ俺も嫉妬なんて初めてしたけどな。)
だからそんな渉に俺も言ってやった。
「お前は俺だけ見てればいいんだよ。」
(その瞳の中にはいつも自分だけが写っていますように。)
Fin