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「あの…黙っててごめんなさい。」
ホテルのロビーに座っていたら程なくして渉がやって来た。
用事も済み、今日はもう帰ってもいいと言うので二人でホテルを出た。
二人とも無言だったが、ちょうど誰もいない夜の公園を歩いている時突然渉がそう切りだした。
「……恒から聞いた。」
「うん、でもちゃんと謝りたくて…。ぼ、僕カメラマンになりたいんだ。明日から恒さんに紹介してもらった先生について勉強できることになった…。」
まだ俺が怒ってると思ったのか、気まずそうに視線を彷徨わせる渉。
「……カメラマンになりたいってなんで黙ってたんだよ?」
「だって…理由言ったら呆れられるかと思って……。」
「理由?いろんな俺を撮りたいってやつか?」
「ひ、恒さんに聞いたの!?」
肯定するように頷くと、渉の顔が一瞬で茹でダコのように真っ赤になった。
「う〜そ、そうだよ…。成也のいろんな表情をもっと見たいし、僕だけのものにしたいと思ったんだ。」
「別に俺のいろんな顔なんて雑誌で見れるだろ?」
思ったままにそう言うと、渉はわかってないとでも言うように首を横に振る。
「成也は撮られる方だからわかんないんだよ…。撮影を見てるとね、モデルとカメラマンの間に絆みたいなものが見えて、外で見てる僕達はそこには絶対に踏み込めない何かがあるんだ。いくら雑誌で見れてもその顔をした瞬間は撮ってるカメラマンさんのものだし、撮影中はまるで成也の恋人みたいで…僕……。」
「つまり嫉妬すんのか?」
コクンと頷く渉。
「だから僕も成也の見せるいろんな表情を僕だけのものにしたいって思ったんだ。」