あぁ気に入らねえよ、悪いか
二人の姿を目にした瞬間、俺の中の何かが弾ける音がした。
気付けば俺の足は、俺の存在に気付くことなくなにやら笑顔で会話している二人の方へと向かっていた。
「成也…」
最初に気付いたのは恒だった。
恒の言葉に振り返った渉は、心底驚いたような顔をしている。
「っ成也!……なんで、ここに…?」
俺の顔を見た時一瞬だけ顔に浮かべた動揺の色に、俺の怒りは最高潮に達した。
「…お前ら、俺に内緒で逢引きってやつかよ。」
自分でも驚く程低い、まるで地を這うような声だった。
「せ、成也!待って、そんなんじゃ…」
「うるせえ!!」
渉が最後まで言う前に俺の声がそれを遮る。
「お前、疚しいことは何もないって言ってたよな?俺に内緒で恒と会うのに、どんな理由があるんだよ?」
今にも渉の胸元を掴もうとしていた俺の前に、突然横から邪魔が入る。
「ストープ!成也落ち着けって、俺達本当に疚しいことなんてしてないから。…それから渉君、そろそろ時間だから先に先生とこ行ってて。俺も後から行くから。」
(先生…?)
いまいちついていけない会話に一瞬頭を傾げた隙に、渉はエレベーターに乗り込み何処かに行ってしまった。
「あ、あんにゃろ…」
渉を追いかけようとする俺の腕を、恒が引き留める。
「いいから、成也はこっち来い。」