青城3年ブラサーズ | ナノ


ホットミルクがいい

徹のことは嫌いではないけど好きでもないと思う。
及川徹という兄を持った私及川なまえは兄が女の子に生まれていたらこうなっているだろうなあという自分で言うのもなんだがそこそこ整った顔立ちをしていると思う。性格自体はテンション低い時は似てるけどテンション高い時は似てないと思う。兄は愛想を振りまくタイプだが、私は基本的にローテンションだ。そりゃあ、嬉しいことがあったら笑うくらいはするけど体全体で喜びを表現したりはしない。まあ、女の子としてそれは致命的な欠陥であったりして、それが理由で私は今振られた。

“ほんとになまえが俺のこと好きなのか分かんなくなった、あんま嬉しそうにとかしないし”

好きなのか分かんなくなったってなんだよ、不安なら私に聞けよ、どのくらい好きなのかどんなところが好きなのか全部言ってやるよ、だいたい別れるって伝えるのがSNSでってどういうことだよ…。
悲しい気持ちよりも苛立ちとかが真っ先に来て、私そんなにこの人のこと好きじゃなかったのかなとかショック受けたりして、これって人間てどうなのとか果てしない思考に入る時、徹が部屋にノックもせず入ってきた。

「なまえー? お風呂いいよ…って、何お前そんな泣きそうな顔してんの」

お風呂上がりの徹が女子力たっぷりのドアから顔を3分の2だけ覗かせるというテクニックを見せつけながら、お風呂の順番がまわってきたことを教えに来てくれたらしい。覗いてる徹の顔は最初は無でしかなかったが今ではその綺麗な私とそっくりな顔が歪んでいる。私、そんなに泣きそうな顔してる?
ゆったりとした動作で徹は私の部屋に入ってきて、ベッドに腰掛けた。何かあったの、って徹は私に聞く。徹は家ではテンション低めで、私の普段どおりと同じくらい無表情だったりする。笑顔も穏やかな感じだし、はっちゃけることも最近はまずない。あと、不機嫌になることも。そんな徹が今見るからに、いや見なくても不機嫌になっている。うわあ、めんどくさい。

「…か、彼氏に振られた」
「ふうん、なんで」
「人に聞いといてふうんって…なんか、私の気持ちがわかんなくなったんだって」

無愛想なのが悪いのかなあ、でもわざとではないんだよなあ、嬉しい時は笑って入るんだけどなあ。そういえばこの人は私が静かに笑うところが好きだと言ってたっけ。私、彼氏といる時は楽しくて嬉しくてずっと笑顔だねって、友達に言われたんだけどなあ。
考えてたらなんだか涙が溢れてきて、とまらなくなってきた。ちゃんと好きだったんじゃん、ちゃんと悲しいんじゃん、苛立ったのは悔しかったからじゃん。

「そいつにお前がもったいなすぎたんだよ、きっと」

そっと私の頭をなでてココアとホットミルクどっちがいい?って聞いてくる徹のことは、そこそこ良い兄なんじゃないかと思う。


20151218

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