「先ずは、だ。政宗、お前は諦めて帰れ。俺の屋敷で恋情の縺れ等と言う面倒事を引き起こされてはたまらん。幸村、政宗を追い出してから戸を閉ざせ」

「ふん、面倒事を起こさねば良いのじゃな。わしは帰らぬぞ」

「違えた瞬間に左近に蹴り出させるが、構わないのなら大人しく座っていろ。それで、兼続は何のよ…」

「直江さん、幸村とお付き合いなされてると殿が申してたんですがね。褥を共にする仲なんですかい?」

座った兼続の隣へ素早く座る政宗を見ながら、話す三成の言葉を遮り素早く兼続の手を包む様に両手で握り左近は先程、三成から聞いた事の真相を問い掛けた。
すかさず、幸村が爽やかな笑みを浮かべ左近の手を叩き払うと左近の問いに答えた。

「勿論です。左近殿、私と兼続殿は褥を共にし身体を重ねる仲です」

「幸村…」

「そうですよね、兼続殿?」

「ああ、私と幸村は恋仲なのだから。当然だ」

その言葉に質問した左近ではなく、ただ座っている政宗の心に被害が出ていた。
その様子に、三成は思っていた。何故、こいつらは自分の屋敷で一悶着起こそうとしているのだろう、と。

「兼続!」

「まだいたかの?山犬」

「わしが、好いていると言うのを欝陶しく思うていると言うはまことなのか?」

「三成、上手く流しておいてくれと言ったではないか」

「俺に振るな。お前らだけで話を終わらせろ」

「では、私が。政宗殿、私は兼続殿を私のものだとは言いませんが…私は兼続殿をお慕いし、兼続殿も私を慕ってくれています。ですから、兼続殿があなたのしつこさに迷惑していると聞きどうすべきか考えていました。兼続殿の事は諦め、必要以上に近寄らないで下さい」

文机の前に移動しなおし執務の続きを開始し我関せずを貫き通す決意から筆を手にする三成、今は分が悪いからまた別の機会に兼続を口説くかと決め傍観者に転じた左近とは違い、政宗に爽やかに言い切る幸村と恋は盲目、幸村を頼もしく思い見ている兼続、と不可思議な様態の室内とかしていた。

「わしは貴様に聞いておらんわ馬鹿め!兼続に聞いておるのじゃ」

「私は私事の全ては幸村のものだ。政宗、私は正直…お前の利に過ぎる性が好ましく思えない。勇は認めるが、私の慕う相手は幸村のみだ!」

「兼続殿…」

兼続の言葉に幸村は兼続を抱きしめた。此処に、伊達政宗の完全な玉砕が決定しているのに対し同じ様に兼続を慕う左近は飄々と幸村から兼続を奪う計画を人知れずたてていた。
幸村が兼続に口付けようと顔を近付けたその時、三度廊下を歩く足音と部屋に現れる人がいた。

「頭デッカチ、終わったかぁ〜?」

「見た通りだ、馬鹿」

「んだよ、終わってねーのかよ」

「邪魔が多いのだよ。花見は二人で行け…明日の」

「正則、こいつらを全部叩き出す。手伝ってやるよ、馬鹿」

現れたのは豊臣の武将、加藤清正と福島正則だった。正則が清正の言葉に手際よく政宗、幸村、兼続と廊下へと追い出す中、清正は三成の片付いていない執務を左近に無理矢理持たせて追い出したのだった。

「約束したら守るもんだろ?正則はあいつらが入ってこない様に見張っとけ」

「おう、頭デッカチ!ちゃんと約束を守れよっ!」

こうして、三成の部屋から追い出された幸村と兼続は大坂城下の旅籠屋へ向かい、玉砕の傷を負った政宗は屋敷に戻り布団に自室に引きこもった。
左近は大人しく押し付けられた執務にあたりつつ、兼続を奪うにはの策を巡らせているものの幸村が以外に侮れないな等と考えていた。

そして、三成は清正の協力と正則の微々たる手伝いのお陰で無事に執務が片付き約束通りに花見に行ったのだった。

「わしは、諦めんぞー!」







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