一意専心
朝。
それは、いつもの様に清々しい朝だった。
昨日は夜遅くまで任務で駆り出されていたので、朝とか来なくてもいんじゃね?と、布団にくるまっているデイダラは思っていたが、朝は必ずしもやって来るのだから仕方ない。
デイ(起きなきゃ…)
重たい瞼を開けようと、うつ伏せ状態から態勢を変えようとした時、腰に違和感が。
デイ( うん…? )
何かが巻き付いている感じ。
しかも、何だろう。ふわふわした物もある。こぅ…猫の毛みたいな。
眠気を払いながら、デイダラはうっすらと目を開けた。
そこには…
サソ「 …スー…スー… 」
デイ「 Σう゛ん!? 」
さぁ、素敵な1日の
はじまり、はじまり…
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いつもの様にメンバーたちが朝食を食べる為に集まるこの時間。
いつもなら、飛段とハシでもくわえながらTVでも眺めているハズなのに…
サソ「TVなんてみてんじゃねぇ!飯食え飯!!」
隣の方がみせてくれません。うん…
しかも、何か『食べさせてやる』とか言い出してんの。
ちょっ、ヤメてくんない?混ぜご飯食えないんだって。嫌いなの!
サソ「鬼鮫ぇ!冷蔵庫に納豆とマヨネーズあったろ?持って来い」
いやいやいや。
混ぜご飯に納豆とマヨネーズ!?
どーゆー組み合わせだよ!!
デイ「だ、旦那ぁ!!アンタおかしいぞ!?」
サソ「ガキの頃チヨバアといつも食ってたから大丈夫だって!よく言うだろ?『ババアの味』って」
デイ「言わねぇよ!!『お袋の味』だろ!?
じゃなくて!組み合わせもおかしいケド、アンタ自体おかしい!ベッドん中にいた時点でおかしい!!うん!」
キョトンとした表情のサソリ。いや、キョロキョロしない!アンタのコトだから!
しかも、その横で飛段がニヤニヤ。
飛「へぇ〜♪お前ら任務明けの疲れとかモノともせずヤってたの?
デイダラちゃん、若いって怖いなぁ(笑)」
とりあえず、手元にあった急須を飛段の顔面に投げつけてやった。
+〜+〜+〜+〜+〜+〜+〜+〜+〜+〜+〜+
今日は任務もないのでフリーな芸術コンビ。デイダラはとりあえずのんびり雑誌でも読もうかと、ソファーに座っていると…
サソ「 膝かせっ 」
デイ「 Σうん!? 」
サソリがすかさずやって来て、膝を拝借。ちょこんと膝枕状態に。
しかも、読もうとしていた雑誌までパクられる始末。
何なんだこのオッさん!!
デイ「……旦那ぁ」
サソ「 あ゛〜? 」
デイ「退いてくんね?うん」
サソ「………ヤだ」
いやいやいや。
三十路越えたオッさんが『ヤだ』って何だよ!?ちっとも可愛くねぇよ!!寧ろ、気持ち悪ぃよ!!
デイダラはとりあえずされるがままの状態だったが、コレじゃいかんと行動に出た。
デイ「悪ぃ旦那。オイラちょっとトイレに」
サソ「 一緒に行く 」 即。
マジかこのオッさん!!!
男性用トイレにて。
とっとと用を足したデイダラは、出ようにも複雑な表情で佇んでいた。
19年間生きてきて、
初めてトイレ待ちされました。
しかも、自分より年上の相方に…
デイ(……あうぅ。旦那、どうしちまったんだよぉ)
昨日の任務までいつも通りだったのにと、頭を抱えて悶えていると…
ガチャッッ
イタ「 ん? 」
デイ「 あ゛っ 」
イタチに見られた。
数秒間無言の後、何事もなかった様に横を通りすぎたイタチ。デイダラは恥ずかしそーに悶えるのを止めた。
そのまま居るのも気が引けるので、そそくさとトイレを出ようとしたら、
イタ「サソリさんからいつもとは違う薬品の匂いがする」 ボソッ
デイ「 え? 」
聞き返そうとイタチの言葉を待ったが、
用を足して、手を洗って、ドロンッ。
デイ「Σいや!オイラわかんねーんだケド!?」
違う薬品の匂いってなんだよ!と、更に悩むデイダラであった。
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サソリがおかしくなってから半日が過ぎようとした頃…
デイ「リーダーぁ!!助けてくれよ!!(泣)」
サソリに後ろから抱きしめられたまま、泣きながらペインの部屋に訪れていた。
ペ「 あ゛!!デイダラ良い所に!
助けてくれっ!!!(泣)」
開けたドアを再び閉めた。
…何故なら、ロープで締め上げられて天井から吊るされているペインが目に入ったから。
デイ「小南!!助けてくれよぉ!!!(泣)」
隣の小南の部屋に行ったよコイツ。
しかし、小南の部屋から人の気配がしない。アレ?っと思っていると…
小「 何か? 」 ガチャッ
…ペインの部屋から出てきた。
とりあえず、『何でそこから?』とか、『その蝋燭なに?』とか聞いたりしちゃいけないだろう。
大人って怖いね。
デイ「旦那の頭がくる×2パーになって、気持ち悪ぃホドついてくるし、ベタベタしてくるんだよ!うん(泣)」
うわーんっと、泣きながら現状報告。その間ずーっとサソリに抱きつかれたまま。小南は2人を交互に見て、申し訳なさそうに口を開いた。
小「ごめんなさいね。
コイツ(ペイン)のせいなの」
デイ「 うん!? 」
かくかくしかじかの話。
昨日の晩、任務を終えて帰ってきたサソリはデイダラと別れた後、自室に直行せずペインの部屋を訪れていた。
疲れて眠たそうにしているデイダラの代わりに、今回の任務報告は自分がしてやろうと、サソリのちょっとした優しさが仇となった。
ペ『ご苦労だったな』
サソ『別に。大したコトねーよ』
ペ『いや。部下の働きを上司はしっかり見てんだぞ!?
そこで、だ!はい、コレ』
ペインは裏ルートから入手したある薬をサソリに見せた。
サソ『コレは?』
ペ『我が国の誇る惚れ薬だ。匂い嗅ぐだけであ〜ら不思議!貴方が想いを寄せてる異性に、どんなツンツン野郎でもデレたくなる天下一品の薬だ!!』
サソ『いや、コレをどーしろってんだよ』
ペ『疲れた傀儡にコレ1本』
ポンッと瓶のコルクを抜いてサソリの顔に近付けた。唐突過ぎる行動に反応が遅れ、少し匂いを嗅いでしまい顔をしかめた。
サソ『てめっ!何すん…っ!』
ペ『サソリで上手くいったら、俺も使ってみよーかと♪で、どうだ?何か変化あるか!?』
しっかり鼻せんをしているペインは、サソリの変化を待っている。
当のサソリは何とも言えない表情だったが、次第に目が虚ろになってきて…
サソ『…デイ、ダラ』
と、一言発してフラりと部屋を出て行ったそーな…
小「…と、いうワケなの」
小南はペインから聞き出したコトをデイダラに伝え終えてから、深いため息をついた。
デイ「…じゃあ、旦那はそのワケもわからん薬の実験台になってこんなコトに…」
小「えぇ。私もペインがウザいホド動揺してたから気づいただけ。
だから、本人の代わりに制裁を…ね」
真新しい蝋燭に火をつけて、小南はペインに歩み寄る。
ペ「Σにゃあ゛ー!!
いかんいかんぞぉ!!小南んんん!!
弥彦の身体が大変なコトに…」
小「大丈夫よ。コレ(蝋燭)は貴方の本体に垂らすから」
そのまま部屋の隠し通路を開いて、中に入ろうとした小南を呼び止めて、
デイ「…ソレ、俺にやらせてくんない?」
マジギレ寸前のデイダラが代わりに入って行った…
その後。
ペイン(長門)に蝋燭を垂らした後、小南のお陰でサソリは元に戻るコトが出来た。本人は何も覚えてないみたいだケド…
デイ「その方が良い…よな?」
サソ「あ?何か言ったか?」
デイ「なーんも!うん♪」
ベタベタしてくる旦那なんてらしくないから、アンタはアンタのままでいて欲しい。
オイラはいつも通りのアンタが好きなんだからな。うん…
(おしまい)