お味はいかが?
味見ぐらいは〜の続き
ぺろぺろしてるだけ
ぺたりと彼のアイセンサーに手をつけて、唇を近付ける。少し出した舌でそっと触れると、アイセンサーがちかりと明滅した。
「ごめんなさい、痛かったですか?」
「いや、痛くは無い」
「…ここを舐められるのって、どんな感じなんですかね」
言いながら、今度はもう少し大胆にぺろりと一舐めした。味は無い。つるりとしていて、ガラスを舐めているみたいだ。でも、少し舌に違和感のようなものが残る。
「…よく、わからないが…変な気分だな」
「ふーん…まあ、人間も目を舐められるとなんか気持ち悪いですし、そんな感じなんでしょうか」
「…おそらく」
ぺろり、ぺろり。猫が舐めるようにして舌を這わせる。
顔を離して眺めれば、赤いそこに自分の顔が映っていた。不思議そうな、満足そうな、よくわからないけれど見慣れた顔だ。ショックウェーブには私のこの顔はどんな風に映っているのだろうか。もう一度、キスをするようにして唇を落とした。
「…味はしないですね」
「当たり前だろう」
「うーん、そうかあ…。…ありがとうございます、満足しました」
そう言うと、私の乗っていた掌が、ショックウェーブの胸のあたりまで降りた。
「想像していたのとは違ったんだろう」
「え?」
「トマトか苺だと言っていた」
「……えっ!聞こえてたんですか!?」
「バリケードが個人回線を開いていた」
「!?…バリケードあの野郎!」
思わず、拳を震わせて悪態をついてしまった。バリケードにあとで嫌がらせをするしかない。
「聞かれてたんならしょうがないですけど…でもまあ見た目の話ですよ?さすがに、そんな味がするとは思ってなかったです。…ちょっと夢見てましたけど」
心なしか面白そうに私を見ているショックウェーブ。
やっぱりお前は変わっているな、などと言われてしまう始末である。やっぱりってなんだ。やっぱりって。
「なまえ」
「?」
ふいに、私の乗っていない方の手が近づいて、顎の下に指が滑り込んだと思ったら、ゆっくりと持ち上げられた。
「お前にならまた舐められてやってもいい」
「…え、……は、…えっ?えっ!?」
そう優しそうな声音で言われて、顔が熱くなってしまった。思わず頬に手が行ってしまう。唐突に何を言い出すんだろうかこの人は。
しかし、戸惑う私を待っていたのはもっと大きな爆弾発言だった。
「その代わり、俺も舐めていいか」
…すみません。私ものすごい大胆なこと言ってたんですね。今なら止めてたオートボットみんなの気持ちがわかる。かーっと、急激に熱くなる体に、固まる思考回路。
そのはずなのに、見上げるショックウェーブの催促するような視線に負けて、口をついて出たのはこんな言葉だった。
「…と、とりあえず、お手柔らかにお願いします」
…誰か阿呆と罵ってください。
−−−
大胆なのかそうじゃないのかいまいちよくわからない主。