味見ぐらいはいいじゃない

あの真っ赤なモノアイを一度でいいから舐めてみたい。
訓練中のショックウェーブを見つめながらぼそりと呟けば、同じく近くでコーヒーを飲みながら訓練の様子を眺めていたバリケードがむせた。


「げほっ、ごほっ!」
「あー……舐めたいなー舐めたらダメかなー…」
「て…てめっ…げほっ」
「…大丈夫?」
「心配するのが遅いんだよっ…」


仕方がないから背中をさすってあげれば、思いっきり睨まれた。せっかく心配してあげてるのになんだその目は。
暫くして、ようやくいろんな意味で落ち着いてきたのか、バリケードが「で?」と促してきた。なんだかんだ言って話を聞いてくれる辺り、彼も面倒見がいいと思う。


「何でんなこと言ったんだ?」
「いや、だってさ。」
「あ?」
「赤い目はディセプティコン全員そうなんだけど、ショックウェーブの目って大きいしなんか美味しそうなんだよね。こう…苺とかトマトみたいな感じで」


丸くて大きくて、光にあたるとより一層輝くあの目が好きだ。


「…お前も大概変わってるよな」
「バリケードに言われたくない」
「俺は普通だ」
「えー…」


嘘つけ…。白けた目で見ているとばれてしまった。
ぐにぐに。頬の肉を抓まれ引き延ばされる。負けじと自分も手を伸ばして頬を抓んでやる。あ、意外と柔らかい。


「は・な・せ」
「そっちがはなせ」

「何をやっているんだ」
「「あ」」


いつの間に終わったのか、近くにショックウェーブ。そしてその後ろから他のメンバーも歩いてくる。うわー見られた。離せ、と目で訴えればあっさり離された。


「ショックウェーブ、誤解しないでください。私こいつに苛められたからやり返しただけなんで」
「は?お前が苛められるって玉か」
「…むかつく!むかつく!」


やっぱりむかつくので、グーパンでもお見舞いしてやろうかと振り返ったら、何故か襲ってくる浮遊感。…あれ、バリケードが小さい。そのまま、くるりと視界が回転して目の前にはショックウェーブの顔が現れた。普段なかなか近くで見ることが無いので、なかなかに迫力満点だ。しかも抓まれてる状態なので不安定。にしても、


「あのーショックウェーブ」
「なんだ?」
「いやなんだって…こっちが聞きたいのですが」
「苛められてたんじゃないのか」
「えっ」


信じてたのかあれ!ディセプティコンなのになんか…なんだろうこの素直さは。
この人こんな素直な感じだったっけ。いや人じゃないけど。


「いえ、大丈夫です。ていうか、本当は話聞いてもらってただけで、その延長線上でああなっただけというか…」
「…そうか」


少し間が空いて返された返事。にしても、せっかくこんなに近いんだし、あのお願いを言うなら今なんじゃなかろうか。ふと、先ほどの願望が頭をよぎった。成せばなる!


「ショックウェーブ、お願いがあるんですけど」
「?」
「…目を舐めてもいいですか」


目標は達成していないのになぜか溢れる達成感。ショックウェーブの後方では訓練組が武器を落としたりあからさまに固まっていたりするが、そんなことどうでもいい。
今気になるのは、目の前で沈黙するショックウェーブの動向だけだ。

やっぱり無理か、無理だよね。引かれたよね。
少しばかりしょんぼりし始めた矢先だった。


「…別にいいが」
「ですよね…って、えっ!」


驚いてガン見すれば、もう一度「別に私は構わないが」と言われた。
マジか。


「えっ、あの、じゃあもうちょっと近づけていただけますか」
「……」


そう言えば、無言で近づけられたので、キョンシーのごとく腕を前にのばしてその瞳に手をつけようとした。ああ、念願のあの瞳が目の前「ストーーーーップ!!!!」


「いや、よくないだろ!」
「何を考えとるんだお前は!!」


それなのに、その手はあと少しというところで止まった。さっきまで、いるかいないかわからないぐらいに黙って立ち尽くしていたオートボット訓練組が、いきなりあわあわ動きだしたのだ。ジャズが私を戻そうと頑張っているが、如何せん手が届いていない。


「ちょっと。邪魔しないでください!いいじゃないですか。本人が良いって言ってるんだし」
「いやおまえ、そういう問題じゃないだろ。しかも、何でショックウェーブなんだよ。どうせ頼むにしてもオートボットに…」
「いや、オートボットの目は別にどうでも…」
『!!?』


ここで止めさせられたら折角の機会を逃してしまう。すると、さっきまで黙って事態を静観していたショックウェーブが、小さな声で囁いてきた。


「少し揺れるが我慢していろ」
「え?」


地面が大きく揺れたと思ったら、コンクリートの破片を飛ばしながら地中から巨大な影が現れた。


「はっ?」
『…ドリラー!?』


瞬く間にドリラーが地中から現れ、これまた瞬く間にドリラー内部に私とショックウェーブは乗り込んでいた。





コックピットのようになったドリラー内部に座るショックウェーブ。そしてその掌の上に驚きに固まったまま座り込む私。いつの間にかその体制は、先ほどの抓まれた猫のようなものではなくなっていた。


「……」


恐る恐るショックウェーブを見上げると、あの真赤な単眼がこちらをじっと見つめていた。


「……」
「……」
「……」
「…ここなら邪魔をされないだろ」


とりあえず、その言葉だけで、色々と胸がときめいてしまったのは言うまでもない。



「…どうぞご自由に」




ええ、勿論。
お言葉に甘えさせてもらいましたとも。




−−−
実はお互い気になっていただけ
名前変換なくてごめんなさい



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