観察力には自信あります
「呼んでくれた日」よりも前の話




「そういえば、もうすぐなまえの誕生日だけど、みんなは何か用意してる?」


ある休日の昼下がり。なまえは最近始めたバイトに出かけていていないし、トランスフォーマーを含めて他のメンバーは揃っているので、丁度いいとばかりにラフはそう切り出してみた。
暴走しがちなミコを止めてくれたり、相談や遊びにも付き合ってくれたり、日ごろお世話になってばかりのなまえ。少しでもいいから感謝の気持ちを送りたいのだけど、自分ひとりじゃなかなかプレゼントを決められない。そこで、他のメンバーの内容も聞いて考えよう…と思っていたわけなのだが、次の瞬間ラフは思ってもみなかった反応を目の当たりにした。


『えっ!?』
「…は?」



…つまり、みんななまえの誕生日を知らなかったのだ。



「うそ!なまえ、今週が誕生日なの!?」
「やばい、何も用意してないぞ俺…」


知ってたのって、僕だけだったの?と言えば、返ってくるのは肯定の返事だけ。ビーなんか、どうしよう…と言って僕のほうを見てくる。


「と言っても、人間にどういうものをプレゼントしていいかなんてわかんないわ…。普通どういうものがメジャーなの?」


アーシーが困ったように言うと、ジャックが悩みながら答える。


「んー…花とか?」
「女の子だったらアクセサリーや宝石を渡すってのも手よね。…私はなまえの好きそうなCDでも渡そうかなー」
「えっ、ミコ決めるの早いよ」
「じゃあラフはアルバムでも渡せば?パソコン得意だから、編集とかも上手にできるだろうし!写真はもちろん私があげるわ!」
「えっほんと?ありがとう!」
「じゃあ俺は、前になまえが欲しいって言ってた本でもあげるか」


人間サイドが次々に決まる中、いまだに悩み続けるトランスフォーマー達。


『うーん…』


困って唸りだす面々に、ふと、今まで黙って話を聞いていたオプティマスが口を開いた。


「そういえば、先日なまえと出かけた際に綺麗な花畑を見つけたのだが、ずいぶん喜んで見ていたな」
「おお!じゃあトランスフォーマー全員からは花束ってことでいいんじゃないか?」
「いいわね。どんなのがいいかしら」
「bbbb〜」
「白?確かに、似合うわね」
「あっ、ねえ!なまえって百合の花とか似合いそうじゃない?」


ミコが言うと、それぞれ検索をかけたのか肯定の返事が上がってくる。じゃあ、百合の花をメインに花束を作りましょう。アーシーがそう言って、みんなが頷きかけたその時だった。



「…おい。プレゼントするのは構わんが、百合は止めておけ」
「えっ」


突然、さっきまでこちらの相談なんて聞いていないかのように機械をいじっていたラチェットがこちらを見ないまま小さく言ってきた。


「何?雑草で基地を汚されたくないとでもいいたいわけ?」


些かイライラしたアーシーが皮肉げに言えば、ラチェットは手元に目をやったままぼそりと呟く。


「違う。あいつは匂いのきついものは苦手だ」
『……』


ちょっとの間ストップして、思わず全員目を見合わせた。
知ってる?…知らない。目で交わされる会話。
何気なく言われたことだが、何故誰も知らないことをラチェットは知っているのか。考えていることはみんな同じだ。
全員を代表して、その疑問をラフは言ってみた。


「えっと…何で知ってるの?」
「何でって…そんなもの見てればわかるだろう」



返ってきたのは、答えにならない答えだった。
でもきっと、その時全員の心は一つになったに違いない。


…無意識にデレるな。と。


当たり前だと言わんばかりの口調で言われた台詞だが、きっとラチェットは自分の言ったことがどれだけすごいのかわかっていない。
呆れたようなそんな空気が漂う中、アーシーがパン、と手を叩いた。


「…じゃあラチェットも言ってたことだし、とりあえず百合以外の白メインでいきましょう」
「オッケー。オプティマス、場所に案内してよ」
「bbb!」
「わかった。ラチェット、グランドブリッジを開けてくれ」
「…わかりました」


トランスフォーマーだけでは花を詰めないだろうということで、ビークルモードになった各パートナーにラフ・ミコ・ジャックも乗り込む。
当然のように、お留守番モードのラチェット。

いつもであれば、そのまま残って作業を続けるラチェットに非難がましい目が向くはずだが、今日に限っては生温かい視線ばかり向けられていたことを、当の本人は知る由もない。



後日、各プレゼントは無事なまえに渡された。


「みんなありがとう…!!どれも大事にするね…!」


腕の中にプレゼントを抱きかかえながら笑うなまえ。ちょっぴり目を潤ませながら本当に嬉しそうに笑うその顔に、ラフもみんなも知らず笑顔になる。


「ちなみに、花の種類はラチェットが決めたのよ」
「えっ!…ほ、ほんと?ラチェット」
「!!?ちが、〜〜っっ」
「ほんとほんと」


アーシーに足を強く踏んづけられて悶絶するラチェットを横目に、ラフはあの日からずっと疑問だったことを嬉しそうにしているなまえに聞いてみた。


「ねえ、なまえって匂いのきついもの苦手なの?」
「えっ?うん、そうだね。あんまり匂いがきついと気分が悪くなっちゃうな」
「ほんとにそうなんだ…」
「ん?」
「あっ!う、ううん何でもないよ」


(やっぱり、何でラチェット知ってたんだろう…)




−−−
ちなみにラフは、アルバムと一緒に手紙を渡してなまえちゃんにものすごく喜ばれた。弟ポジ!

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