まだ始まったばかり
こちらの世界に飛ばされて、何日か経った。とはいえ、トランスフォーマーと一緒に生活しているということ以外、今までとほとんど変わりのない世界だから、ものすごく困ってもいない。
ホームシックにもなっていないから、思っていたより私は肝がすわっているのかもしれない。
…問題は私とパートナーの関係、だろうか。


「ラチェット…先生?」
「……」
「えっと…今は何を作ってるの」
「……ボケの壊した機械を直している」
「そ、そっか」
「……」


会話がまったくもって続かない。
生返事の時よりはまだましだけど、常時こんな感じではどうしていいのかわからない。
私がパートナーになると決まった時も嫌そうだったし、人間嫌いのようだからこのくらいしょうがないんだろう、と割り切ってはいる…けど、なあ。うう。
めげないで頑張ろう…。心の中でこぶしを握り締めながら決意を新たにしていると、後ろから名前を呼ばれた。


「なまえ」
「オプティマス、どうかした?」
「いや…君がこちらに来てしばらく経ったが、基地で生活していて困ったことはないかと思ってね」
「ううん。今のところは全然無いです。…ありがとう、気にかけてくれて」
「構わない。これからパトロールに行くのだが、一緒に行くかね?食料品もいるだろう」
「んっと、じゃあお言葉に甘えてもいいですか?」
「もちろん」
「えっと…ラチェット先生、行ってきます」
「…」







「気にしないでくれ」
「え?」
「今はラチェットも戸惑っているだけだろう。本当の彼は非常に仲間思いなのだ」


オプティマスに乗っている途中、唐突にそう切り出された。
私とラチェットの状態が気になっていたんだろう。そうやって、いつも静かに周りを気にかけている彼にひどく優しい気分になった。


「大丈夫、気にしてないよ。誰だって、いきなりパートナーだって言われても戸惑っちゃうだろうし。ラチェットが優しいのも、まだ少ししか一緒にはいないけど、よくわかるもの」
「…ありがとう、なまえ」
「どういたしまして」


それに、オプティマスが優しいのもよくわかってるよ。と続ければ、一瞬照れたような沈黙が流れる。可愛い。頬が緩むのがわかったけれど、隠すのもなんだか変だし、と思ってそのままにやけていた。
なのに。
次の瞬間、やり返された。



「そんな君も、優しいよ」



そんな声音で言われたら、照れるしかないじゃない。



−−
まだラチェットのツンが10割の頃。

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