連携プレー
エネルギー反応が見つかったので、いつもの前線メンバーをグランドブリッジで送り出したラチェット。ふと、隅の方からそーっとグランドブリッジのほうに向かっていく影を見つけて、すかさず声をかけた。
そういつも行かれてたまるか。
「おい、ミコ。どこに行こうとしている」
「ギクッ…え、えーっとー…」
ごまかそうとするミコに、ラチェットは呆れたように額に手をやる。
「…お前は毎回毎回……全く、いい加減にしたらどうなんだ」
「だって気になるんだもん!」
その言葉に脱力してしまったラチェットを見ると、ミコは今がチャンスと駆け出した。
「お、おい待て!」
止めようと声を荒げるも、もはやミコは聞いていない。
今まさに彼女が飛びこもうとした、寸前。なまえの柔らかな声がミコの名を呼んだ。
「ミコ待って」
「!」
「実は今日、ミコにプレゼントがあるんだけどな」
なまえの呼び声に急停止していたミコは、その言葉を聞いて勢いよく振り返った。
そして、「これなんでしょう?」と言ってなまえが取り出したものを見て、目を輝かせた。
「そ、それは昨日発売したばっかりのゲーム!」
「しかも、ミコがずっと気になってたやつです」
「きゃーっ」
嬉しそうな悲鳴を上げてなまえの近くに駆け寄るミコ。
すかさずラチェットはゲートを閉めて、そのレバーの前を立ち塞いだ。
「いっつも、良い子にしてるミコにサプライズと思って買ってきたの」
「ほんとっ!?」
「でも…」
そこで、笑いながら話していたなまえの顔が悩ましげな顔になる。
「今日、ミコがそっちに行っちゃうなら、あげるのやめちゃおっかなー…」
「えっ、」
「実は私のバイト先の人もこのゲーム欲しがってて…すぐにしたそうだったし、ミコちゃんがしないのなら先にその人に…」
「ええええっ、ダメよそんなの!」
「じゃあ、今日は私と一緒にゲームして待ってよう。ね?」
「う、うー…あー…」
「それに、最近一緒に遊べてないでしょ?偶には私にもミコを独り占めさせてよ」
微笑みながら手招きするなまえを前にして、ミコも遂に折れた。その顔は照れているのか思いっきり緩んでいる。
「も、もーなまえったらー。しょうがない、遊んであげるわ!私のゲームテクを見てなさい!」
「ふふ、ありがと」
ジャックとラフは、スキップでもしそうな足取りで階段を駆け上がるミコを横目に見ながら、囁き合った。
「なまえって手綱取りがうまいよね…」
「まあ、ミコより扱いが難しいパートナーがいるしな」
三人は知らない。
そんな風に二人が話し、ミコがゲームをセットしている陰で、ラチェットとなまえが声に出さずに
「(助かった)」
「(どういたしまして)」
と口を動かしていたことを。