常識外れは当たり前
ぺたり。
バンギラスの岩のように固い体に頬をくっつけてみると、つるりとした感触が伝わってきた。とげのような凹凸が私の皮膚をつくけれどそれはあまり気にならない。
一見すればただの岩のようなそれでも、実はちゃんと温かいし鼓動も聞こえてくるのだ。こうやって抱き着くたびにいつもそう思う。
温かい。
みんなは凶悪だとか危険だとか言うけれど、知らないだけだ。私が落ち込めば寄り添ってくれることを。涙を流せば鼻を近付けて慰めてくれることを。こんなに優しいのに。
ああ、愛しい。
そのまま抱きついていると、しばらくしてバンギラスがゆっくりと身じろぎし、戸惑ったように声を上げた。
「…嫌だった?」
問えば、ふるふると首が横に動く。
やがて、手持ち無沙汰に宙をかいていた腕が私の体に回された。体重をかけないように注意しながら、私の頭にバンギラスが鼻を擦り付けてくる。息が髪や顔に当たってこそばゆい。
「バンギラス、くすぐったい」
笑えば、答えるように鼻を鳴らす。しばらくして爪が柔らかく服に触れて、ゆっくり上下した。あやすように、慰めるように。
そして、愛しい人を愛撫するかのように。
それに思い至った瞬間、脳天にバンギラスの鼻が擦り付けられた。ぐるぐる。猫みたいな甘え声。
同時に顔が熱を持ち始めた。恥ずかしくてもがいたけれど、逃げようにもまだ私の体にはバンギラスの腕が回っている。
カリカリと背を引っ掛かれて背中が粟立った。
初めとは打って変わって戸惑う私の頭上で愉快そうな唸り声が上がった。
―――
名前変換がなかった