望まぬ声と花

こんばんは。今日も来てくれたのですね。ああ、でもまだ貴方は気付いてくれないわ。どうして…どうやったら貴方は私を見てくれますか?お月様、お月様。どうかあの人が私に気付いてくれますように。


今日も雫が落ちてきます。





お月様。またいらしたんですあの人。でもまだ気付いてくれないんです。どうしたらいいんですか。私には何もないのに。あの人はいつも私の傍を通り抜けるんです。今日も私は動けませんでした。ねえ、ねえ、行かないで。


今日もまた温かい雫が降ってきます。





ああ、お月様。今日はあの人が見てくれました。素敵な銀色でした。でも、どうしてかしら。あの人の目は月のない夜の様で。お月様、どうかあなたの輝きをあの人にも分けてあげて下さい。どうか、どうか。


今日も赤い雫が落ちてきます。







お月様。あなたの光があの人にもきっと届いたのです。今日、私を見てくれたあの人の目は、あなたのいる夜空のようでした。もう私は、何も願いません。嬉しいわ、泣きたいわ、ああ、お月様…。


今日は静かな夜ですね。






お月様。あの人はいなくなりました。あの人の目にはあなたがいたけれど、やっぱり最後まで深く揺らめいていた。……きっと、あれが、『哀しみ』なのですね。もうここには、私しかいません。……嗚呼、そうか。これが『淋しい』?でもわかりません。わかっているのかもわかりません。私は変わっているのですか?


…淋しい、淋しい、淋しい、淋しい、哀しい、哀しい、淋しい、さびしいさびしいかなしいかなしいさびしい……あなたにあいたい

初めてあの雫が欲しいと思いました。





「……枯れちまったのか。−ずっと、お前は見ていてくれたのにな」
「こんな血塗れの乾いた場所で、ずっと、ずっと」
「あいつらが死んでも、あいつらの血を受けても、お前だけは生きていてくれたのに」


「なあ、  お前も逝っちまったんだな」






「銀ちゃん帰ってきたと思ったら、なにボーッとしてるアル。夢でも見てたアルか?」
「……ん、まあな」



渇いた荒野に花一つ

(夢、ね。)(見てたには違いねーか。)(なあ、そうだよな、)

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