赤鬼と子供(1/6)


とある人里離れた山奥に、一匹の赤鬼がおりました。




大昔、まだ人の世界と妖の世界に大きな境が無かった頃。
気紛れに人里に現れる妖達は今よりも見慣れた存在で、大いなる力を持って人に恵みをもたらすモノは神と崇められ、人に害なすモノは魔として畏怖と敵視の対象とされ、人畜無害な小さな妖は人の住みかにて親しまれ、それぞれが自由な暮らしをしておりました。

赤鬼はどちらかと言えば粗暴で、妖同士で争う事も多く、たまに人里へ降りては人間を喰らっていた為に、人の世界では魔のモノと恐れられ、疎まれていました。
しかし、時にはその力に魅了され、赤鬼の下を訪れる輩もおりました。
訪れた者は必ず鬼をよく褒め、収穫物を貢ぎ、代わりに願いを叶えるよう交渉を持ちかけましたが、鬼にとって人間などどうでもよく、気が向けば話に乗り、気が向かなければその場の者を取って喰い、自由奔放、気のままに過ごしておりました。

根本的に作りの違う妖と人は常にすれ違い、時に激しい争いを引き起こしながらも、互いに袂を別つ事なく奇妙な共存を続けていたのです。



そんな話も昔の話で、人と人とが巨大な鉄の塊を操り争う様になった頃。

それは、住みかを追われた多くの妖が人々の前から姿を消し、人々も妖を只のお伽話だと笑うようになった時代。
存在を忘れ去られたモノはそのまま息絶え、昔の騒がしさが嘘のように静まり返った山の奥の奥に、赤鬼は未だ存在していました。


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