赤鬼と子供(3/6)


鬼は、里が近くなると自分が妖である事を話し出しました。

いくら盲目とは言え、今まで自分を運んでいたモノが、何百、何千と人を平らげてきた鬼であると知れば、少なからず恐怖に顔を引きつらせるだろうと、そう思ったのです。
しかし、そんな鬼の予想とは裏腹に、子供はにこにこと笑うだけで怯えた様子は微塵もありません。

ならばと、子供が先程から大事そうに持っていた硝子玉を奪い取ると、硝子玉を返して欲しくば鬼の腹に収まるようにと、とんでもない話を持ちかけました。
が、それにも子供は怯える様子はなく、玉は此処まで運んでくれたお礼に、そして体も差し出すと笑いながら言うのでした。

すっかり調子を狂わされた鬼でしたが、丸々太ったら喰いに来る事を約束し、子を乱暴に降ろすと、子も笑顔で頷き、覚束ない足取りで里へと帰って行くのでした。


それからと言うもの鬼は、ひと月の終わり毎に人や獣に化け、子供の様子を見に里へと降りて行きました。

子供は家とは少し離れた物置小屋に入れられていました。
一度捨てられた者に居場所などある筈もなく、ろくに飯にもありつけていないのか、子供は肉が付くどころか、見る度に痩せ細って行きました。

これではいつまで経っても喰う事が出来ないと思った鬼は、仕方がないので山にて食料を調達すると、今度は美しい女の姿に化け、子供の元へとやってきました。

鬼は、人が甘美な言葉に弱い事を知っているので、美しい容姿と甘い声で里へと降りれば、それを疑う村人達は誰もいませんでした。
そして優しい言葉で子へと近づき食べる物を差し出します。
すると子は、何の警戒もなく何度も感謝の言葉を述べながらそれを口にするのでした。


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