赤鬼と子供(2/6)


消えるモノ、移り住むモノ、山には赤鬼の他に妖と呼べるモノは既に残っておりませんでした。

妖への関心が薄れ、すっかり馴染みの無くなった人里から鬼は遠退き、また自ら鬼の下へと足を運ぶ人間も無くなり、鬼の周りは本当に静なものでした。
しかしこの程度の事は鬼にとって気に留める程のものではありません。
時折山奥へと迷い混む人間が現れれば恐怖を与え餌とし、人々の間で噂される畏怖の念を糧に、大昔と変わらず自由奔放、気のままに過ごしておりました。



そんなある日の事。

鬼は山の中腹にて、一人、声を上げて泣いている小さな子供を見つけました。

腹の足しにでもしようかと取り敢えず摘み上げてみたものの、子供は痩せ細っていて、どうにも美味そうではありません。
目も見えていない様子で、鬼に驚くどころか、逆に自分以外の生き物に出会えた事に安堵しているようでした。

調子の狂った鬼は、子供を放り投げるとまた山の奥へと姿を消しましたが、暫く止む事のない泣き声が煩わしくなり、再び子供の前へと姿を現しました。
人里にでも放り返しに行こうと子供を乱暴に掴むと、子供は一瞬驚いたのち、鳥の様に高い声で軽やかに笑いました。
そして、山の途中で親とはぐれてしまったのだとか、助けてくれた事への感謝だとか、聞いてもいない事を一生懸命に話しだすのでした。

鬼にとってはそんな話はどうでもよく、別に助けるつもりもありません。

人の消える山、神隠しの山と噂されるこの場所に、年端も行かぬ盲目の子が置き去りにされたと言う事は、つまりは捨てられたのだろうと、子の話を聞くのも半端に心の片隅で思っておりましたが、口を聞くのも面倒で黙っておりました。


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