(!)佐鈴で甘甘。





帰り道、息も白く、寒さに体を震わせながらマフラーをきつく巻き直した。

「寒い?」

その動作に隣に並んで歩く佐藤が鼻を赤くしながら聞いてきた。
大丈夫だ、と答えるが、手袋なしにいる佐藤の方が寒いだろ、と言いたくなった。
ついさっき、手袋はどうしたと聞いたら、なんと無くしたそうだ。まあ、少し抜けたところのある佐藤らしいと言ったららしいが。

「今年は、雪降るといいね。」
「は?雪なんて降ったらもっと寒くなるだろ。」
「でも、雪って楽しくない?ほら、昔少ない雪で雪だるまとか作らなかった?」
「まあ、作ったけど、今となったら雪だるまなんか作んねえだろ。」
「そう?俺は作るけどなぁ。」
「お前は子供だなぁ。」

また大きく息を吐く。
灰色の空の下で、こうやって恋人と歩けるのももう終わりだな。
それは、今日が終業式だったからだ。
明日から冬休み、こいつと会えるのも今年が最後だ。
いつもと変わらず、たわいもない会話を交わすもどこか心は寂しくあった。ただ、それを言葉にしてこいつに言える性格に生まれなかった俺は、ひたすら心の中で佐藤の中を呟く。

「お前、進路とかどうすんの?」
「んーまだなんとも。」
「おいおい、俺らもうすぐ3年なんのにそんなんでいいのか?」
「あはは、だよね。でも、できたら、再来年も鈴木と一緒がいいな。」
「っな!」

突然の佐藤の告白に俺は言葉を失った。
手袋をしてもかじかむほど寒いはずなのに、体温が上がっていくのを感じた。

「え?どうしたの、鈴木?まさか、照れて···」
「うるせえ!こっち見んな!」
「あはは、鈴木ったら、かわいいんだから。」
「かわいいとか言うな!」

真っ赤な顔を見られたくなくて佐藤からそっぽ向く。
佐藤はいつも俺のことをかわいいとか言って困らせる。

「···鈴木、」
「うるさい!喋んな!」
「鈴木、」
「呼ぶな!」
「鈴木っ、」
「!」

佐藤が背中から俺に抱きついてきた。
一瞬、何をされたかわからず固まってしまったが、すぐに状況を理解し、さらに体温を上げてしまった。

「お、おい!佐藤!ここッ、外!」
「···わかってる。」
「ば、か···わかってんなら、離せ!」
「あー、鈴木のこと、まじで好きなんだな、俺。」
「や、ばか!耳元で囁くなっ!」
「ねぇ、鈴木、年明けたら··一緒にお参りいかない?」
「え、」

佐藤は抱きしめていた手を退けて、俺の正面に立った。
いつも通りの優しげな笑みを浮かべながら俺の手を取った。

「本当は、年末一緒にいたいんだけど、親戚の集まりとか年末のバイトとかで一緒にいられないんだ。けど、31日から鈴木と一緒にすごしたくて。」
「俺と?」
「うん、鈴木と2人きり。」
「2人きりって、」
「ちょっと遠出して、ホテルとか借りてさぁ、一緒にすごそ?」
「そんなお金ねぇよ···俺。」
「それは大丈夫、年末のバイトもその為だから。」
「っ!そんな!」
「もうすでに予約は済ませているから、あんまり高いとこじゃないけど、ね?」

佐藤の行動力に驚きながら、いつも見せない強引なところに少し、ほんの少しだけだが、キュン、とかしてしまった。
俺は口をぱくぱくさせながら、佐藤が握る手を見た。
鼻より真っ赤になり痛々しい手、凍傷にでもなったらどうするんだ。でも、強く握られた手にドキリとする。
俺は佐藤の手を退けて、はめていた手袋を片方外した。
不思議そうに見つけていた佐藤の左手を掴むと手袋をはめた。
そして、手袋のなくなった自分の左手を差し出した。

「お前、ほんと···ばか。でも、そんなとこが好きだから···。」

俺なりのイエスの言葉。
佐藤は気づいた様子で嬉しそうに差し出した左手を右手で握った。そして、俺たちはそのまま家へとゆっくり歩いた。



end







← | 次
戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -