(!)病佐藤。暗。
暴力表現有り。
微死ネタ。
佐藤の愛は深く重く歪んでいた。
「鈴木、鈴木鈴木鈴木…鈴木。」
譫言のように俺の名を呼ぶが、もう俺には聞こえているようで聞こえない。
俺を抱き締めて離さぬ腕は鎖のようで、俺の名を呼ぶ声は自白剤のようで、俺を閉じ込めた部屋は牢獄のようで…。
「愛してる、大好き大好き…もう、俺には鈴木だけなんだ…。」
鎖は錆び付いて、そしてその錆びは俺の肌に染み付いて取れない。
「さ、と…」
微かに動く口は彼の名しか呼べないようになった。佐藤は嬉しそうに微笑めば、キスを求めてきた。
絡み合う舌は気持ち悪くて、しかし反抗なんてする力はない。
身体は力が入らず、まるで人形か死体のような身体。そして、身体中の打撲痕。骨が折れてしまっている腕は皮膚の大部分が真っ青に染まり痛ましい。
原因?
それは目の前に"いる"。
「綺麗だよ…俺の残した跡だらけの鈴木の身体。」
光の無い空虚な佐藤の瞳は、汚れた俺の身体だけを映した。
「さと、う…佐藤…」
「鈴木、可愛いよ。」
「さと…」
「大好き大好き大好き…もう離したくないよ。」
違うよ佐藤、もう縛っているだろ。離してはくれないだろ。
「その呼吸すら愛おしいよ…」
そんなことを言われれば身体が微かに震える。それは我が身に微かに残っていた恐怖心であった。
「…俺を……殺す、のか…?」
その言葉に佐藤は目を見開いて俺を見下ろしていた。
数秒の間を空けたあと、佐藤は満面の笑みを浮かべた。
「殺さないよ…だって、」
人差し指で頬を一撫でした。
「愛してるからね。離しはしないって言ったでしょ?鈴木を殺しちゃったら、鈴木いなくなっちゃうじゃん。そんなの耐えられないし、許さないよ。」
「許さない…?」
「鈴木は、俺に殺されて逃げる気だろ?俺の束縛から。」
微笑みながらの言葉には愛や優しさなどの人としての温かさは含まれず、本当の闇がそこには含まれていた。
闇は歪み、亀裂からは真っ黒の血が流れ落ちる。その血は止まることなく流れて、その内に血は固まり憎悪の塊と化す。
「そんなの許すわけないじゃん!だって、鈴木は俺のものなんだから。」
数ヶ月後、佐藤は鈴木を殺めた。
そして、自らも命を絶った。
end
生きるときも死ぬときも一緒。
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