心臓が跳ね上がるのを感じた。

「へ、いすけ…お前、どうして…」

「やあ、鈴木。」

「何でお前、」


「何で来ちゃったの、鈴木。」


平介はいつもとどこか雰囲気が違うように感じた。口調がとても鋭く、まるで威嚇のようだ。しかし、柱の影のせいで顔は見えなかったので、平介がどんな表情なのかまで読み取れなかった。

「お前らが、いつも何か変な行動してたから…気になって着いてきたんだよ!んだよ、こんな廃墟みたいな場所でっ気持ち悪ぃな!何してんだよ!佐藤は何処行きやがった!」

俺は今までの気持ちを吐き出すように平介に言い放つ。しかし、平介はピクリとも動かずに俺の方を向いていた。

「佐藤は…いるよ、ここに。」

「はあ?じゃあ、さっさと呼んで来いよ!帰るぞ!」

瞬間、月が雲に隠れた。と、暗闇に馴れた目が異様なものを写し出した。

平介の顔。しかし、目が赤かったのだ。

「…え」

「どうしたのさ、鈴木。そんな驚いた顔しちゃって。何か見えるの?」

赤い目は弧を描いて微笑んだ。

「何で、来たの?鈴木。俺は、俺たちは…鈴木には、一生知られないつもりでいたのに…。」

動揺と、恐怖心。

「でも確かに佐藤は演技が下手すぎだったね。鈴木が疑問に思っても仕方ないさ。まったく、佐藤くんには困ったものですね。」

「……お前、何だよ…」

何だ、誰なんだ、こいつ。

「平介に決まってんでしょ、鈴木。」

違う。

「誰だよ…お前、何なんだよ。」

こいつを知らない。

「どうしたんだよ、鈴木だって色んな事で知らないことはいっぱいあるでしょ?その中の一つ、それが鈴木の目の前にあっただけだよ。」

「ッたぶらかしてねえで言えよ!!!」







月光が赤に染まる瞬間を見た気がした。


「……俺は、俗に言う、吸血鬼という存在なんだ。」







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