それから数日後の帰り道。

「俺、今日こっちだから!」

佐藤はいつもは通らない道に足を向けていた。

「え、何かあるのか?」

「…ちょっと、ね…じゃあバイバイ!」

少し困った様子の佐藤。
しかし、俺は手を振りながら一瞬の表情の変化を見過ごさなかった。

顔を前に戻した時の、あの恐ろしい表情を。



それから佐藤は時々、その道を行ったり、時には違う道へ行くようになった。

「平介、佐藤ってなんかバイトとか始めたのか?」

「バイト?」

俺は何も言わない佐藤に不審に思い、昼休みのある時、佐藤が席を外した隙に平介に尋ねてみた。

「だってあいつ、最近帰り道バラバラだろ。なんかバイトでも始めたのかな、て思ってさ。」

「バイト…バイト、なのかな……あれは。」

平介は暗い表情で呟いた。
「何が?」と聞こうとした瞬間。

「何の話してんの?」

にこにこといつもと変わらぬアホ面の佐藤が戻ってきた。…本当のアホ面は平介か。

「佐藤、お前ってバイトしてんのか?」

「バイト?そんなのしてないよ!そんな暇ないしね!」

「じゃあ、」

「そう言えば、さっき先生が鈴木のこと呼んでたよ。」

俺の言葉を遮る平介。
その内容に「まじかよ!」と言いながら、席を立ち、職員室へ足を向けた。






「佐藤、もうやばいんじゃ…」

「そ、うだね…もうそろそろ…」

この時、佐藤の瞳が俺を捕らえていたことなんて知らなかった。






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