(!)鈴木と長谷さんのお話。
   長谷さんのことが気になる鈴木。  




昇降口を抜けて靴箱に行くと、一年生の靴箱前に見覚えのある女生徒がいた。
記憶の中を探って誰だったか、と考えているとその女生徒はさっさと教室に向かっていってしまった。
さらっと真っ直ぐな髪質に、肩までのショートヘア。俺はふと、綺麗だと思った。


とある3時限目。
俺はあの見覚えのある女生徒のことで頭がいっぱいだった。

「鈴木。」

名前を呼ばれて振り向くと、手に教科書を持った平介がいた。

「あ?何、平介。新作のケーキできたのか?」

「何で俺を見たら、みんなお菓子目的なワケ…次、移動ですよ。」

「あ、まじで。」

周りを見渡せば半数の生徒はもうすでに教室から出て行っていた。
平介は薄ら笑いを浮かべてにやにやしていて、俺は少し苛々した。

「おーい、鈴木ー平介ー行こう!」

扉の隣には佐藤が爽やかな笑顔で手を振っていた。

「鈴木、次の授業終わったらノートを貸しては頂けないだろうか。」

「クッキー10枚となら。」

「…乙女かy…」

「貸さねーぞ。」

「…喜んで作らせて頂きます…。」

平介を黙らせて、佐藤の元へ向かった。
次の教室は階段を一つ上がってから、角を曲がって廊下を少し進んだところだ。
階段を上がっている間、平介と佐藤は次の授業の先生のことについて話している。

「先生のさぁ、あの喋り方笑えね?」

「あーあれだろ…¨この問題〜わかるかな〜?¨だろ。」

「そお!それ!!毎回、笑い堪えるの大変なんだよなぁ〜!」

「ぷっ!つか、平介がモノマネって所に俺ツボったっ…ぷぷ!」

「俺の全力モノマネだぜ。」

階段を上がり終わって角を曲がった時だった。
目の前にあの女生徒が現われた。

「あ、…」

その女生徒と俺は接触してしまって、女生徒は俺の胸の中に納まってしまった。

「おっと…おい、大丈夫か。」

「あ、すみません…ぼーとしてしまってて。」

「¨長谷さん¨大丈夫?」

その瞬間、背筋に電気が走った。

「…大丈夫です。」

「鈴木の胸に飛び込むなんて、災難だったねぇ!」

余計なことをいう佐藤に「うっせえ」とツッコミをいれて、女生徒を胸から剥がした。
すると、女生徒のあとにボーウィッシュな髪型の女生徒がやってきた。

「長谷!何やってんの!」

「あ、友子ちゃん。」

3人の男子に囲まれた友達の姿に少し困惑の表情を浮かべたあとに「長谷が何かしたようですみません。」と軽く会釈した。

「いいんだ。」

「あ、先輩…」

その「友子ちゃん」と呼ばれた女生徒は、平介を見て呟いた。

「じゃあ失礼します。」

「すみませんでした…」

そういうと階段を下りていった。
俺たちは数秒の間を開けたあとに、佐藤が「時間やべ!」というのを合図に小走りで教室へ向かった。
俺は心中にもやもやとしたものを感じながら、教室の扉を開けた。

そして思い出した。
あの子はよく廊下の窓から外でバカやっている俺たちを見ていた女生徒だった。きっと、窓から見つめていたのは、平介だろう。
さっきの「友子ちゃん」が呟いた「先輩」。平介のことだ。
そのあとの一瞬の長谷さんの表情が、どこか恥ずかしそうだったこともある。

「(あいつに、恋ねぇ…)」

横目で見た平介の表情は、いつも通りの締まりのないねむたそうな顔だった。
まったく凄い奴だ。

それにしても、長谷さん、か。
俺のこの気持ちは恋だとしたら、凄いと思った。



end



――――キリトリ――――

長谷さんに恋する鈴木
鈴木はきっとそれから
長谷さんのことで頭が
いっぱいだろう←





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