(!)flat2巻の最後の方にあった
   読み切りの「ふゆめ」の葉太と平介のお話。

   最初の設定は平介は高1。葉太は中3。










「これ、落ちましたよ?」

「あ、ありがとう。」


学生証に書かれた名前。
『小川平介』。

たったそれだけの短い出会い。
俺は忘れてないですよ。










数ヶ月後。


「平介さん!久しぶりです!」


元気よく抱きついてきた葉太を受け止める。中学生なのにその姿に幼く感じてしまい、それが愛おしかった。


「やあ、葉太くん。元気だった?」

「ええ、平介さんは元気でしたか?」


ニコッと柔らかな笑顔。
そう、俺はこの笑顔に惚れたんだ。そうして、愛しい気に頭を撫でた。


「平介さん!昨日、じいちゃんとヨーコさんと散歩に行ったんですけどね!」


俺の胸の中で楽しそうに話す葉太に、少し眉を潜めた。


「おじいさんと仲良しなんだねえ。」

「大好きですから!」


馬鹿だな俺、おじいさんに嫉妬してるんだろ。身内の話なのに。


「じいちゃんね、平介さんのこと話したら、優しそうな人なんだろうねって言ってました!確かに平介さんは優しいです!」

イライラ、すると手が葉太に伸びた。


「じいちゃんが、え……」

「ちょっと静かに、葉太。」


綺麗な顎のラインを一撫でして、柔らかな唇に唇を重ねた。


「平介、さ……」

「あれ?…そんなに真っ赤になっちゃって、よかった?」

「よ、よよ、よくないっ!!」

「はいはい、可愛い可愛い。」

「う!平介さんって、顔に似合わず、時々意地悪ですよね…」

「俺は、優しい人間だよ?」

「ウソだぁ!」


平介さんの意地悪な心の中にある、優しい微笑み。
俺はそこに、その部分に一番惚れていた、のかもしれない。


「平介、さん…」

「何?」

「わがまま…言っていいですか…?」

「いいよ。葉太くんのわがままなら、俺はなんでも聞くよ?」

「…っじゃ!キス…もう、一回…っ」

「…うん。」


そうして、平介さん、貴方は優しいキスをしてくれましたね。
俺はあの時、とても幸せでしたよ?

貴方は、覚えていますか。




また数ヵ月後。冬。


「えっ。引っ越すの?」

「というか、合格した高校がじいちゃん家の近くで。高校はじいちゃんの家から通うことになったんです…。」

「そ、うなんだ…」


呟くと、寂しげな表情で俯いた。
そんな平介の姿に、葉太は苦しそうだった。


「だ、だから…きっと、平介さんに、会えなくなる…」

「…」

「それで…え、と……もう、別れて…」


葉太の体、全身に強い圧力がかかった。
そして、目の前は真っ暗に。


「葉太…そんなこと言わないで…」


上からする声に顔をあげると、そこには至近距離の平介の顔。


「別れるなんて、言わないでよ…」

「平介、さん…」

「また、一緒に……」

「平介さん…貴方が、好きです。愛してます…」

「俺も、だ…」

「永遠に、愛してます…、永遠に忘れません…」



だから。

サヨウナラ、平介さん。



冬。雪が多く積もった日。俺たちは、別れた。








季節が流れた春。


「じいちゃん!ただいま!」

「おかえり、葉太。」

「おかえりなさい、坊ちゃん!」

「ヨーコさんも、ただいま!」


俺は高校に通い始めた。
毎日が楽しくてたまらない。


「今日はどうだった?」

「今日もめっちゃくちゃ楽しかったよ!」



でも、どこか寂しい。…そして、悲しい。



「友達の田中くんって子がね!…」


平介さん、貴方がいない世界。


「あと、数学の時間で!…」


愛しい者のいない世界。


「本当に面白かったんだ!」


でも、俺は、歩かなくちゃいけない。
貴方を忘れない。
ずっと、永遠に思っています。


「明日も学校が楽しみだよー!!」


愛してます、平介さん。
そして、サヨウナラ。




end




――――キリトリ――――


実は、ふゆめの葉太く
んが結構好きだ!

で、平介と会わせたい
という勝手な願望にて
出来た作品。

最初は甘甘で終わらせ
ようと思っていたけど
気がついたら、悲恋的
な作品になってた。

まぁ、気分でまたこの
CPで作品を書くかも
しれません^^






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