目の前の海藤くんは、さっきとは違う、いつものクールな顔に戻っていた。
俺はわけがわからず、海藤くんの目を見つめることしか出来なかった。
「か、い藤…く…」
「小川さん、好きです。」
「え…」
今、彼はなんと、言った。
「小川さんのことが、好きなんです。」
何の躊躇いのない真っ直ぐな目が俺を捕らえて離さない。そのせいで、目を反らしたいにも関わらず、反らせないでいた。
すると、海藤くんは無言のまま、俺の上から退いた。
「ぁ…海藤、く……」
「失礼します…」
「待って、くれ…海藤くん…」
俺は反射的に海藤くんの腕を掴んで、逃げる海藤くんを捕まえる。
「俺、は…海藤くんのこと…嫌い、じゃないよ…」
「え?」
「だから…す、きって言われて…嬉しかった…」
俺は今、どんな顔をしているだろうか。ただ、熱い。
海藤くんは無言のまま動かない。
何か怒らせただろうか。
「あなたって人は……」
「え、んっ…」
すると、唇に何かがあたる。それに、目の前には海藤くんの顔。
あ…キス、されてるのか。
優しいキスは長い間続き、そして静かに離された。
「小川さん、好きです。」
彼はまた甘い告白を呟くと、俺を強引に抱き寄せられた。
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