「このお店なんかどうですか?」
ちょっと洒落たバーに誘われ来たものの、こんな店に来たことがなくて少し戸惑う。
海藤くんは慣れた様子で足を進めていく。
「小川さんはお酒とか大丈夫なんですか?」
「まあ大丈夫かな…多くは飲めないけど、多少なら飲めるよ。」
こうやって平然ぶっているが、内心は口から心臓が出るくらい緊張している。
さっきまで海藤くんに話しかけられただけでも混乱してたのに、飲みに誘われるなんて…混乱というか、何か夢を見ているような気分。
「ギムレット2つ。」
バーテンにそう注文すると、「わかりました。」と小さく答える。
周りを見渡せば、男女カップルが沢山いて、男性2人の俺たちはどこか浮いているような気がする。
「海藤くん、ここよく来るの?」
「…えぇ、まぁ…。」
「へぇ…洒落たとこ来るんだねぇ。」
緊張しているせいで少し口が回る。お酒も飲んでないのに。
すると、目の前に2つのカクテルが差し出される。
「では、どうぞ…。」
「ありがとう、海藤くん。」
「乾杯」とグラスを鳴らして口に含む。
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