海藤くんが来て1週間が経った。
彼は接客が仕事なのだが、彼の丁寧な対応はとても評判が良いらしく、お客様からのクレームは全くないと聞く。
店長も「君に期待してるよ。」と言っているのを前に見た。
そして、俺は相変わらず厨房から彼を見ることばかりだ。
彼が俺の作ったデザートを持っていく度に胸がドキドキとする。
俺の作ったデザートを見る度に「綺麗ですね。」と微笑みかけてくれる。俺はそれだけで、心拍数が異常に上がり、身体が火照ってしまいデザート作りに支障をきたす。
午後22時。
今日もまた営業が終わった。
他の従業員が帰る中、俺は明日のデザートの仕込みをしていた。
「小川さん、お先に失礼します!」
「ああ、お疲れ。」
「小川さ〜ん、あまり無理しないで下さいね。私も手伝いましょうか?」
心配の言葉をかけてくれたこの子は、パティシエで俺が最近期待している子。よく気を回せるし、技術も申し分ない。
いつかは、自分の店を構えられるだろう。
「大丈夫だよ、少し身体に鞭打つくらいが丁度いいんだよ。」
「そうですか?では、お先に失礼します!」
そう言い去る彼女の背に微笑み、仕込みを再開する。
そうして仕込みももうすぐ終わる時に、背後から誰かの気配を感じた。
「小川さん、まだ仕事されていたんですか?」
振り向けば、そこにはまだ制服姿の海藤くんがいた。
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