(!)大学生パロ。甘甘。
半音下がりな俺たちの世界は、常に不思議な音色が包み込む。
大学からの帰り、佐藤から電話があり、家に来てくれない?という誘いだった。
昼が落ち込んだ夕方の空を眺めながら、佐藤が住むアパートに向かう。
佐藤の部屋のベルを鳴らせば、扉が開いた途端、佐藤が俺に抱きついてきた。まるで、大きな犬のような恋人の背を撫でながら部屋に入る。
「どうしたんだよ、佐藤。」
「はぁ……鈴木ぃ。会いたかった…」
抱きついてきたまま離れない恋人の懐かしい匂いに俺も温かい気持ちになった。
佐藤を何とか引き離し、珈琲を作るため台所に立つ。
すると、背後から人影が。
振り向こうとした途端、温かいものに抱きすくめられた。
「佐藤…お前、何やってんだよ。」
佐藤に無言のまま抱きすくめられた瞬間、佐藤の手は俺の身体中を探るように動き回る。
こそばゆい、その動きに俺はくぐもった笑いを溢す。
「っふふ…ちょ、バカ佐藤っ!くふ…!」
佐藤は無言のまま鈴木の肩に顔を埋めている為、どんな表情かわからない。
ただ長く愛撫し続けられるだけ。
「ん…さと……」
「鈴木ぃ……一緒に住も…」
呟くような小さな声はとても重要なことを言った気がした。
そして、そのまま佐藤は俺を押し倒して、台所で愛撫をされる羽目に。
目が覚めたら、ベッドに裸で寝ており、隣には寝息をたてる佐藤がいた。
カーテンから漏れる朝日の感じから、もう昼に近いことがわかる。
(嗚呼、大学さぼっちまったな…まあいいや……)
そして、再びベッドに体を沈めた。
目の前で静かに寝てる佐藤を見ていると、昨日のがっついてきた佐藤とは比べ物にならないほど、今の佐藤はとても可愛らしい。
(いつもの大型犬が、猛獣に大変身とか…まったく男って怖ぇな……あ、俺も男か…。)
クスッと笑っていたら、佐藤がもぞもぞと動き出して、いきなり抱きついてきた。
起きたのかと、小さく「佐藤…?」と呟けば、「おはよ…すずき……」と寝ぼけた声が返ってくる。
「おはよう、佐藤…」
「んー…今、何時…」
「えと…午後11時くらい……」
「あーバイト……1時から…」
すると、俺の額にキスをして、起き上がった。
佐藤はそのまま、床に散らかったズボンを掴んで着替えに立ち上がる。
俺は出ていく佐藤の手を反射的に捕まえる。
「ん…?鈴木?」
「佐藤……一緒に、住んでやろうか…?」
「え?ほんと?」
鈴木は恥ずかしそうに下を向いたまま、小さく頷いた。
お互いに学校やバイトなどで忙しく今日も一週間ぶりだ。
佐藤も恋しいと思うように、俺だって、とても寂しくて恋しい。
「鈴木…こっち向いて…」
「さと…」
「うん、一緒に住も…」
佐藤はそう言うと、鈴木の顎を掴んで深いキスをした。
半音下がりの世界は、甘い音色を奏でて俺たちを溺れさせる。
end
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