(!)平介ファミリー。
ほのぼの。
「平介、今日は何日?」
「えっと…5月5日ですね。」
「と言うわけでっ!今日、平介は外出しちゃだめだからね。」
「は?」
ちいさなこいのぼり
靴紐を結んでいるとあっくん母に肩を捕まれてしまい、こっそりと外出するはずの予定が突如奪われた。
すると、あっくん母と母が何かの用意に勤しんでいる。
机の上には、鯉のぼりの砂糖菓子が乗ったケーキに、豪勢な料理たちが並んでいる。
それに外を見れば、小さな鯉のぼりがゆらゆらとなびいている。
「…今日、なんかあんの?」
「何言ってんの、あんた。ここまでの用意を見て、わからないってのも驚きだわ。」
「うーん…」
「ほらほら思い出すがいいわ。」
「うん?何かデジャブ…」
すると母は、俺の肩を叩いてキッチンに連れていかれる。
キッチンには何やら用意がされており、俺は目をパチパチさせて棒立ちする。
「はい、今から鯉のぼりの形をしたケーキを作りなさい。」
「え、いいんですか、作って?」
「あんたそれしか出来ないでしょー!」
あっくん母は肩をバチンッと叩いて笑う。
「え、てかさっきケーキが…」
「あれはみんなで食べる用よ。あんたが作るのは、あっくんが食べる用のケーキ!」
「はあ…」
「だから、あれよりは小さくて、可愛くて、美味しいのを作りなさい。」
「結構条件ありませんか…」
「まあいいから、ちゃっちゃと作りなさい。あっくんが帰ってくる前に。」
「あっくんはお出かけ?」
「パパとね、ほら!作る作るっ!」
鯉のぼりの形に切ったスポンジケーキに生クリームを塗り、最後の装飾をしているとあっくんたちが帰ってきた。
「秋、お帰り!あらっカッコイイ!」
「あらまーいい男になったわね、あっくん。」
母たちがあっくんの姿を見るなり黄色の声を上げている。
横目で気にしながら、鯉のぼりの目を描いていると、小さな影が目に入った。
そこにいたのは、袴の正装をきっちり着こんだあっくんがいた。
「へーすけ!」
「やあ、あっくん。」
あっくんは俺の姿を見るなりキラキラとした眼差しで見てきた。
「カッコイイ服だね、似合ってるよあっくん。」
そう言うと更にキラキラとした笑顔で照れている。
すると、リビングからあっくんを呼ぶあっくん父の声が聞こえてきて、あっくんは行ってしまった。
俺は数秒間あっくんのいた場所を見つめて、再び鯉のぼりケーキに取りかかった。
「今日はあっくんの日だから、たくさん食べて楽しんでね。」
「じゃあ、カンパーイ。」
と、あっくん母の声でパーティーが始まる。
あっくんは美味しそうに母たちの料理を食べている。そんな姿をあっくん父が幸せそうな笑顔で写真を取っている。
「あ、平介。あなたが作ったケーキ、そろそろ持ってきたら。」
「うん」
そうして、キッチンから先ほど作ったケーキをあっくんの目の前に置く。
「「おー」」
平介のケーキを見た途端に感動の声が漏れる。
「さっすが平介ね!ケーキ作りが好きなだけあるわね…」
「ははは……(何か殺気を感じる…)」
あっくんはキラキラした目でケーキを見つめっぱなしだ。
「へーすけのケーキ?」
「うん、あっくんの為に作ったんだ。」
「おー!」
またあっくんはケーキを見つめっぱなしになる。
ここまで喜んで貰えると、まあ作ったかいはあったかなって思う。
すると、あっくんはクルッと俺のほうを向いた。
「ありがとう、へーすけ!」
その笑顔にドキッとした。
ああ、感謝されるってこういうことだったんだな。一応、あの後輩が望みそうなことが出来たんじゃないかなって思う。
そうして、パーティーは続いた。
「そーいや、今日って何の日なの?」
「え!平介、今まで分かってなかったの!?」
「この子の鈍感さは誰に似たのかしら…」
end
(こどもの日ということで書いてみました!平介は鈍感さんな感じがする(笑))
← | 次