後日、また先生に呼ばれて資料室の片付けに勤しんでいた。
「それにしても君はホントよくやってくれるねぇ〜」
「…それはどうも…」
なんか不服な気持ちになった。
というか、もう俺はこの先生の駒という位置なんだろうな。
「そういえば海藤くん、少し話を聴いてはくれないだろうか。」
「何ですか?」
「最近ね、小百合さんがよくおでかけして帰ってきてくれないのよ。」
「…そうですか」
あの猫にはあまり良い思い出がないので、興味が半減。
「でねこの間、帰ってきたと思ったら、おでこに傷を作って帰ってきたんだよ。」
「傷?」
「うん、ちょっと打ったみたいでねぇ…かわいそうに。でも、あの人にもそんなドジっぽいところもあるのかと安心したよ。」
そういうと「ほほほ」と笑って先生は部屋を出て行った。
あの性悪猫がドジをねぇ…いい気味だ。俺は正直そう思った。
それにしても、おでこに傷か…あの先輩を思い出す。
放課後、靴を履き替えて校門に向かっていると、あの猫がいた。
(あの猫は…)
本当にでかけてきているんだな、あの猫。
何気ない顔で通り過ぎようとすると、小百合さんが「にゃー」と鳴いた。
振り向いて、小百合さんを見つけた。
「にゃあー」
小百合さんはニヤリと笑っていた。
『ありがとね…』
私の声なんて聞こえないだろうね。
「…別にいいですよ…」
彼は呟いた。
「先輩…」
この猫と彼女が似ているような気がした。
「…にゃあ」
小百合さんは目を見開いて小さく呟いた。
俺は小百合さんの額に付いた傷を見て微笑んだ。
end
(小百合さんが人間になる話。海藤が紳士になる話。もうわけわからん。)
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