「あっ…」
思い出した。あののんびりしたトリオたちだ。あの子たちが何かしら関わって…。
「どうかしましたか?」
「い、いや…何もない。」
すると、海藤は私の目の前で背中を向けて屈んだ。
「何?」
「いや、保健室まで背負っていきますよ。きっと頭を打ったのですよね?」
「!いいよ!!ちゃんと歩けるし…」
「俺、別に気にしませんので。先輩が気になるのでしたら、肩ならいかがですか?」
そういうので、私は海藤の肩につかまって立ち上がった。
立ち上がった瞬間、頭の中が真っ白になった。視界が歪み、倒れそうになった。
ああ、やばい。と思った途端、体を支える力で傾きが止まった。
「先輩っ大丈夫ですか!」
その声が耳に届くこともなく意識を飛ばした。
『いてぇ…あ、小百合さんが倒れてる!?』
『ちょ、やべえよ!じじ先生の怒られるって!』
『逃げるぞ!』
ちょっと待ちなさいよ…にゃぁ……。
「!」
目を覚ますと白い天井が視界を占めていた。
少し頭に痛みを感じながら、体を起こすと体にまた異変が。
手を見ると、白い毛に覆われた前足が。
首をひねって体を見ると、猫の姿に戻っていた。
声を出すと「にゃー」と本来の姿だと改めて感じた。
「にゃー!(やっと戻ったわ)」
「ん…」
「!?」
声が聞こえて横目でゆっくり見ると、そこにはベットにうずくまって寝息をたてた海藤の姿が。長い睫がとても綺麗だった。
「…」
この子ったら、本当に保健室?に連れてきてくれたみたいね。
でも、この姿見られたのかしら…。
周りを見渡してみたが、教師や生徒の姿はなく、私とこの一年生だけ。
きっと見られていないわね。
「にゃあ…」
少しニヤリと笑って、海藤の頬をペロリと舐めた。
「ふ…」
ありがとね、海藤くんや。
また遊んでやるよ。
「んん…」
目が覚めると、ベットはものけのからだった。
はっとして周りを見渡したが、彼女の姿はなかった。
まるで夢を見ていたかのような気分だ。それか狐につままれたような。
体を起こして、ふっと背伸びすると、髪が乱れていることに気が付いた。
手で直そうとした時に、何かあたたかな気持ちが溢れた。
綺麗な手で少し乱暴な感じに撫でられたような。
そして、面白そうに鼻で笑う彼女。
そんな知らない記憶が蘇る。
少しの間、頭をゆっくり確かめるように直して、彼女が眠っていたベットを見つめた。
(ああ、またあの先輩に会えるだろうか…)
照れたように笑って立ち上がった。
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