お、おお、落ち着け私!
これはなんかの夢だ!
人間になっているだなんてそんな夢みたいな現実があるはずがない!

目覚めろ、目覚めろ、と心の中で何度も唱えながら右頬をつねった。
なんとも強情な夢だ。全く覚める気配がない。ああ、困ったものだ。

その後、中庭で何分も夢と格闘したものの、目覚めることが出来ない。
まさか、これは、現実なのだろうか…。そういえば前後の記憶がない。なんてことだ!



「君、さっきからそこで何をしているんだ。」



聞き覚えのある声が耳に響いた。
私は跳ねるように振り向いた。

そこには。


「何か中庭に落とし物でもしたんですか?」


よく、じじの手伝いをさせられているという一年生。
馬鹿で間抜けでよく泣くあいつ。


「…」

「俺も手伝いますよ。」


確か名前は、海藤とか言ったか?何でこいつがここに、ていうかもう時間帯的に放課後、なぜいる!


「…いや、べ、別に大丈夫よ…それに探し物を探しているわけでもないわ…」


自分の口から発せられる人間の言葉に少し動揺した。
海藤は不思議そうに首を傾けるとじっと私を見ていた。


「…あの、どこかでお会いしたことありましたか?」

(ドキッ)「お、同じ学校だから何処かですれ違っていたりしているんじゃないかしら。」

「そうですね。」


海藤はまた首を傾けていた。なんて勘の鋭い奴だ。それもこういう時に限って。


「あの、」

「何?」

「名前を伺っても?」

「…小百合よ。」

「小百合先輩ですか。」

「え?」

「あなたは3年生ですよね。それ3年生の校章。」


指をさされて胸元を見れば、小さく輝く赤色の校章。


「俺は1年生の海藤です。」


ええ、知っている。
それにしても何で制服なんかに。


「あ、小百合先輩、額に傷が…」


言われて額に触れるとズキリと痛みが。
あれ?額…。


『あ、小百合さんだ。』


聞き覚えのある声が頭に響く。


『…ぉ…あまり小百合さんを乱暴に扱うなよ。』

『大丈夫だよ、俺動物には優しいし!小百合さん、おいで。』

『にゃー』

『それにしてもこいつ、ホント雪だるまみたいだな。』

『す、ぃ…!小百合さんに失礼だろ!』

『にゃあ!』

『ほら!小百合さんが怒って……』

『¨鈴木¨、危なっ…』


ガッツン!!!










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