何が起きたのか把握できずにいた。
意識を戻すと、俺の体は、ベッドに倒れ込み暖かい何かに後ろから包まれているようだった。嫌な予感がする。
目線を下ろすと、俺の腹辺りに腕が。この腕は、まさか。
「鈴木…」
耳元で囁かれた声。
この声は、誰だ。
「鈴木、大好き…」
誰だ。
この声は…誰だ。
佐藤?
それとも…。
「や、いや…はっ、離せ……嫌だっ、やめて、くれっ!いや、嫌だあああああ!!!」
フラッシュバック。
目の前に現れる"アイツ"の顔。舐めるような視線。卑下な笑み。俺の体に染み付く感触。痛み、痛み、痛み。
「鈴木。」
離して離して離して離して離して離して離して離して!!!
心の中で何度叫ぼうとも、何度抵抗しようと、佐藤は離そうとはしなかった。
「…俺ね、知ってるんだ。前にあった強姦事件…被害者って鈴木なんでしょ?」
「ぁ…えっ……?」
今、佐藤は何と言った…?
「知ってたんだ、少し前から。」
佐藤が…あの事を……俺を知っている…!?
「いや、だッ…!離せ!!!」
「ごめんね、鈴木。」
瞬間、佐藤の顔が目の前にあった。
唇に当たるこの感触。
「んッ…!?んぅ!!やッ…」
抵抗虚しく、佐藤に後頭部を押さえつけられて離れることが出来ない。苦しい、気持ち悪い、離してくれ。拒絶。
「やぁ…あ……」
「鈴木、鈴木、鈴木…そんな君が好きなんだ…。」
「な、に…?」
耳にはっきり残った佐藤の告白は俺の耳を疑うものだった。
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