平子隊長、と呼ばれる度に、
胸の痛みは酷くなった。
「平子さん、
どうしたんっすか?」
ちょっとした用事で十二番隊に足を運んだ際に喜助に言われた一言。
「何がや?」
「平子さん、
今とても顔色が悪いっすよ?」
顔色が悪い?
確かに最近、体調が優れない。
「それに…何すか、その左手首。」
喜助は怪訝そうに平子の左手首を見た。俺の手左手首には、
赤い直線が無数に並んでいた。
みみず腫になって爛れているのもある。
痒くなり時々掻きむしる時があるせいだと思う。
「何してるんすか…?」
「あ、ああ…これか…?
剃刀で切ったんや。」
喜助の顔が更に歪んだ。
「何で…そんなこと…」
「自分でもわからへん…
気がついたら切ってまうんや…。」
「藍染、さん…すか…?」
喜助の口から呼ばれた名前は、
あの胸の痛みの原因だ。
「…」
「これの原因は、藍染さんなんでしょ?」
「ちゃう…」
「最近のアナタは、藍染さんしか見てないじゃないすか。」
「そんな、こと…」
「じゃあ何で、泣いてるんすか。」
泣いてる?
右手を頬に沿わした。
そして、瞬間意識して初めて気づいた頬に伝う涙。
何で、俺は泣いてるんや。
「平子さん、
何で泣いてるんすか?
何で苦しそうなんすか?
何で悲しそうなんすか?
何で、…なんすか?」
最後は声が小さくて聞こえなかった。
俺は喜助を真っ直ぐに見つめることしか出来なかった。
「喜助…俺…」
「言ったら良いじゃないっすか。」
鼓動が激しい。
「藍染さんにその気持ちを全て。」
鼓動が止まった。
「全て…?」
「平子さんの心の中にある暗い部分も明るい部分も、全てさらけ出したらいいじゃないすか。」
「でも、そんなん自己満足や…」
「気持ちを全てさらけ出すことのどこが自己満足なんすか!平子さんの気持ちを藍染さんに…」
「もうええ!!!」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ。
何でお前はいつもを助けようとすんねん。
俺のことなんかお前に関係ないやろ。
何でいつも、いつも…俺の隣にお前は。
「平子さんの側にいたいからっす。」
喜助の言葉に顔を上げる。
「平子さんのことが…否、
平子さんの友人としてアナタを助けたい。
だからっす。」
「き、すけ…」
「もう、自分を切るのはやめてください。
平子さんが自分を傷つける姿なんか見たくない。」
喜助はそう言うと俺の手を握った。
鼓動は揺るかに打っていた。
「さあ、そろそろ戻ったほうがいいんじゃないすか?」
「喜助…喜助…」
「今日から、私と平子さんは赤の他人です。」
「え?」
鼓動がまた揺るかな激しさを見せ始めた。
十二番隊を去った後、俺は喜助の言葉を信じれないままゆっくり五番隊へ戻っていった。
《喜助side》
アナタが好き。
しかしアナタは藍染さんが好き。
アナタは私とよく話をしてくれる。
けどアナタの目にはいつも私は写っていない。
叶わぬ恋。
ならと、俺は小さな反逆をした。
「今日から、私と平子さんは赤の他人です。」
アナタは一瞬困ったような顔をして、私の色無き目を見て悲しそうな表情をした。
平子さんの「ま、待ってや!喜助っ!」と慌てる声に耳を貸さず、追い出すように私から平子さんを突き飛ばした。
これでいいんですよね。
これで。
end
やっとおわった。
謎な文になってしまった!アーッ
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