隊主室を開くと、
そこは血の海でした。



手元に大事な書類を抱えて
隊主室へ向けて廊下を進んでいく。

そろそろ冬が近づいてきた為か
体が軽く震え息を吐けば白となる。
ああ、この季節は苦手だ。

「平子隊長、
資料をお持ちしました。」

隊主室前で問いかける。
しかし、返事がない。

「隊長?
いらっしゃらないのですか?」

また返事がない。
すると、
隊主室内から何か微かに声が聞こえた。

「…ぁ…き……あい…す…き…」

愛?好き?アイス?
途切れと切れのため、はっきりと何を言っているのか聞こえない。
しかし、微かながらその声は平子隊長の声に間違いなかった。

「隊長…?入りますよ…」

襖をゆっくり開けて、
その間から覗き見た。


…そこは、血の海でした。


「!?隊長っ…!
何をしているんですか!?」

平子隊長は床に倒れ混んでいて、
右手には剃刀、
左手は赤。

急いで近づき隊長の体を抱き上げる。
髪は乱れ、長い髪の毛の間から覗く隊長の顔は真っ青だった。

「平子隊長!?隊長!
目を開けてください!隊長!」

揺さぶってみても隊長は
目を開ける様子がない。
不安感が胸を襲う。



実は、知っていた。

隊長の手首に赤い直線が
無数にあったこと。
平子隊長に自傷癖があったこと。

しかし、
何故そんなことをしているのかなんて
副隊長でしかない自分が聞ける筈もなく、
静かに見守っていた。



今、隊長の顔は死人のようだ。
心臓に耳を当ててみれば、
か弱く打つ鼓動が聞こえた。
生きている、嗚呼よかった。

隊長が生きていることを確認し、
応急措置をしようと気道を紡ぐ瞬間。

「やめて、くれ…惣右介…」

平子隊長に手を捕まれた。

「隊長!?…よかった。」

胸を撫で下ろした。
しかし、隊長の顔には未だに生気がない。

「何で…こんなことを…。
今すぐ四番隊に連絡を…」

「惣右介!」

突然、隊長が叫んだ。

「呼ばんで、ええ…」

「何故ですか。」

「…お前が、
ここにいてくれとる、
それだけでええ…」

隊長が何を言っているのか理解出来なかった。

「隊長?」

「惣右介…愛して、る…」

思考が止まる。
血塗れの状況で、隊長は何を。

「好きや、好きや…好き。」

血塗れの左手と右手が私の頬に添わせる。
次に右手が私の肩を掴んだ。
そして、肩を引き平子隊長は
私を隊長の方に引き寄せた。

瞬間、唇を奪われた。

「た、隊長…」

「愛してるで、惣右介。」

異様な状況で愛の告白をされた。
平子隊長は歯を見せて笑っていた。
私は理性を震わせて、
細い隊長の体を抱き寄せた。

窓から見える粉雪。
無垢な白は真っ赤に汚れていくのを感じた。



END



自傷癖の平子隊長。





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