空はすっかり闇になった夜のこと。
平子は自室で明日行われる馬酔木軍での訓練の準備を行っていた。
すると、扉の向こうからコンコン、と小さなノックが聞こえた。
こんな夜中に誰だと不審に思いながら問いかけた。

「誰や。」
「夜分遅くに失礼致します、藍染中佐であります。」

嫌な堅苦しさのある言葉にため息を零しながら、入れ、との言葉を投げ掛けた。

「申し訳ございません、夜遅くに。」
「別にかまへん。それにしても、まだ残っとったんか?」

藍染の姿をみればまだ制服を着ていた。

「明日は、馬酔木軍全体での訓練や、早く体休めときや。」
「大佐はまだお休みにはならないのですか?」
「俺は明日の準備をせなあかんからな、で、用はなんや?」
「明日の訓練のことで少し聞きたいことがありまして。」

なんて真面目なやつなんだと、心の中で呟きながら話を聞く。

「……で、どうしたらよいでしょうか?」
「それはお前にまかせる。お前の判断はいつも間違ってへんと信じとる、好きにやればええ。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「それだけか?」
「はい…一応、」
「一応、てなんやねん…まだあるんか?」

藍染には珍しく濁ったように呟く言葉に聞き返す。
それに対して藍染は眉を潜めながら口を開く。

「平子大佐には、ご家族はいますか?」

唐突すぎる質問に、平子は「はあ?」と苛立ちを交えて言い放つ。

「なんやねん、突然…」
「いや、ただ純粋にお聞きしたかっただけなんです…」
「…家族はおらん」
「恋人は?」
「はぁ…おらん。ただ、」
「ただ?」
「大切な友人たちならおる。」
「友人、ですか?」
「こんな俺にでも友人くらいはおるで。」

俺はなんでこんな質問に真面目に答えてしまっているのだろうと頭の中で呟いた。
藍染は俺の言葉にこれまた真剣に聞いていて、俺は呆れ笑いが漏れる。

「お前はどうやねん。」
「家族、ですか?」
「ああ、おるんか?」
「いえ、家族はいません。ついでに恋人も。」
「そか、お互いに似た境遇やな…友人はおるんか?」
「友人、といいますか、私を慕ってくれる子供がいます。」
「子供?」
「…それは、いずれ平子大佐にお見せする機会があると思います。」

なんやそれ、と藍染の言葉の意味を理解できずにいた。








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