部屋から出ると、廊下に人影があった。
さっきの眼鏡の青年だった。
青年、こと藍染中佐は窓の外を眺めていた。
眼鏡の下から見える瞳はとても虚ろだった。

「そこからなんか見えるか?」

気がつけば自然と声を掛けていた。
藍染は弾かれたようにこちらを見た。
俺の姿を捕らえると、またさっきと同じ微笑みを浮かべた。

「お初にお目にかかります、平子大佐。」

藍染は足を鳴らしながらその場に揃えて、背筋を伸ばし、綺麗な敬礼をした。これぞ、エリートのなのか。
そう、中佐という立場はエリート。
まあそりゃ、大佐もエリートやけど、俺の場合は頭の良さより実戦の数からなるもの。どれだけの戦いに関わり、どれだけの成果をあげたかのものだ。

「あーええよ、そんな堅苦しい挨拶は。」

堅苦しいものが嫌いな俺は藍染の綺麗な敬礼に対し手をひらひらと泳がせながら返す。
藍染はそんな大佐の姿に驚いたようにこちらを見た。

「俺はな、あんまり堅苦しいんは好きちゃうねん。なんつーか、信条?みたいなもんや。上下はっきりさすより、楽しいやりたいねん。でも、あれやで、山本大将ん前はちゃんとせなあかんけどな。」

笑いまじりにそう語るも彼は背筋を真っ直ぐにし立っていた。これは難儀な奴やな。

「わかりました。これから、よろしくお願いします。平子大佐。」
「···ああ、よろしくな。」

これが藍染との出会いだった。

それから数ヶ月が経ち、藍染は俺らの隊に慣れてきて、俺も藍染のことを惣右介と呼ぶようになっていた。

「惣右介、お前この間の小競り合いでえらい成果あげたらしいやん。」
「小競り合い、というのはあまりにも酷い言い方ではありませんか?···最近、流魂街外れの戌吊で辻斬りが流行っていて、その犯人を捕まえたんです。」
「あれか、死者が10人近く出とったやつか···」

惣右介はとても優秀だった。
着任してからといい、流魂街で起こった事件や喧嘩、あらゆる事柄に関わり治めてきた。

誰もが、惣右介を尊敬し憧れていた。

「···惣右介が、また解決したんか?」
「はい、藍染中佐のおかげで丸く収まりました!」

藍染が来てからというもの、あらゆる事件がすんなりと解決していった。
俺も仕事が楽になり、他の部下も藍染をとても信頼するようになっていった。

「本当に、藍染中佐には頭があがりません。」

そんな理想のエリートがやってきてから、俺にはある疑問が過ぎっていた。
それは、僅かだが、事件の起こる件数が増えているのだ。
誰もがたった僅かではないか、と言うほどの数。
しかし、俺がとても不思議に思うのは数だけではなく、誰が見ても違和感がないように少しずつ増えていくことなのだ。

そして、もうひとつは事件の内容が残酷なものが増えたこと。
藍染が来る前は殺人なのだほんの1、2件だけだったのが、ここ最近は10件を有に超えていた。
そんなの誰が見てもわからない、ただ街の治安が少し悪いだけ。それだけで済むだろう。

しかし、目の前で部下に囲まれて立つ藍染は笑っている。

「藍染中佐!この間はお疲れ様であります!」
「ありがとう。」
「藍染中佐、どうやってあの事件を解決なされたのですか?」
「藍染中佐」
「藍染中佐」
「藍染中佐」



そして、一番の不信感は、この場に馴染みさぎていることだ。
俺を除く隊のほとんどの者が藍染を慕い憧れ、まるで信仰のように名前を呼ぶ。
上手く言葉に出来ないが、胸に引っかかる違和感が俺を藍染から遠ざけていた。




H26.03.26加筆


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