「それより、藍染、お前仕事は?」
「今日はお休みです。」
「そっか、じゃあ一緒におれんねんな。」
「はい。」

藍染はコーヒーのコップを食卓に置くと、俺の体を抱き寄せた。

「真子、真子…真子…」

ひどく弱弱しい声で呼ぶ俺の名。
藍染が俺の名を呼ぶとき、いつも頭の中にある映像が流れる。

月が綺麗な夜。
目の前には藍染がいて、俺もいる。
藍染は何故か俺に刀を向けて、切りつけようと刃を振り上げた。
俺はすでにぼろぼろで、藍染に向かって名を叫ぶ。

そんな映像がいつも流れる。

「…俺はここにおるで、藍染。」
「真子、真子…愛してます。」
「ああ、俺も好きやで。」

藍染は俺の体を倒すと、そのまま抱き寄せて眠った。
こいつは俺の体に何もすることはない。
求めることも、傷つけることも。

そんな藍染の姿を見ていると、あの夢は全くの夢なのかという嬉しい反面、俺を壊れ物のように扱うのがとても嫌になるときもある。

枷をつけられたときは、意味がよくわからず混乱していたが、今はどこか重い。
この枷が俺を何か特別なものへと変えてしまっているようで。

「眠るの早すぎやろ…」

眠る藍染の頬に手を寄せて撫でる。
少し痩せた?最近、仕事が忙しいとか言ってたもんな。

別に、俺を特別視しなくていい、俺に優しくしなくてもいい。
ただお前の傍を離れたくない。
俺がお前を大切にしたい。

「惣右介。」

俺はあの夢を思い出しながら、藍染の眼鏡を静かに取った。

「やっぱ、藍染は眼鏡のほうがええな。」

ぷっと吹きだしながら眼鏡を枕の傍らに置いた。
そして自分の腕を藍染の腰元に回して、ゆっくり抱きしめた。
心臓の音が耳に直接響く。暖かい。

「藍染惣右介。」

いつか、お前があの夢と同じく、刃を向ける時があったとしても。
俺はその時も笑っていよう。
お前がそれでいいなら。

俺はゆっくりと瞼を閉じた。



end




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