(!)微エロ注意、悲恋?





静かな空き教室に光が射し込む。
光に照らされたあの時のお前は、
とても、綺麗だった。







茜射す夕方の校舎。
紫の影が俺たちを茜から隠す。

いつものグラウンドで見せる熱心に野球に打ち込む表情からは想像つかないような艶やかな三橋が目の前にいる。

空き教室の一室に俺たちは縺れ絡み合いながらなだれ込んだ。

三橋と俺は別に付き合っているわけではない。この関係は…欲のぶつけ合い、と言ったものだ。
三橋には、三橋の好きな人がいる。


「んぁ…はっ、榛名、さっ…」


なんて胸糞わりぃ名前を言いやがるんだろうかと心の中で呟きながら三橋を激しく揺さぶる。

汗と精の匂いが部屋中に漂い、軽く酔いそうだ。


「っく、三橋っ!!」

「あ、ひゃっ…ひ、は、榛名っさ、んん!!」


だから、やめろよな気色悪い。

しかし虚しいものだ。
好きな奴が、大嫌いな奴のことが好きで、それも俺を相手にアイツに置き換えて肉欲の貪り合いだなんて、ほんと虚しい限りだ。



何もかも出しあって、情事が終わると、三橋は上を向いて体を小刻みに震わせながら余韻に浸っている。
俺も息が上がりきってるのを落ち着かせるため、繋がったまま三橋を見つめる。


「み、三橋…大丈夫、か……」

「…は、…は、…」


三橋は何も答えず余韻に酔いしれたままだ。

そんな三橋でも、俺は愛しくて堪らない。
榛名のことで頭がいっぱいのこいつを俺だけのものにしたい。俺だけを見て欲しい。
嗚呼、お前がこんなにも愛しいのに…この行為は無意味だなんて。


「あ、べくん…」


こいつは俺の気持ちなんか知らずに、ただの欲の掃き溜めくらいにしか思ってないんだろうと思う。いや、こいつに「欲の掃き溜め」なんてそんな下品な言葉、理解なんてしていないし理解もしないだらう。

純粋で、無垢な奴だからこそ、残酷なこの行為を理解できない。


「ん、今日も、ありがと…気持ち、よか…た……」


そんな言葉を呟くと、寝息を立てて意識を飛ばす。

俺は三橋の中から俺を抜き取ると、三橋の体を清める。
噎せかえるような空気の中、裸の三橋と俺しかいない。
なのに、こいつが求めているのは、榛名。


「胸糞わりぃ…」


榛名、あんたが、羨ましいよ。

三橋の白の肌を見つめながら制服のボタンをとめていく。
身支度を済ませて、いまだ寝息をたてる三橋の肩を揺らして起こす。


「三橋、三橋、おい起きろ。」

「ん…ふぁ……」


大きな欠伸を上げながら体を起こす三橋。

外は真っ暗な闇に包まれていて、電気の付けてない教室では月光だけが頼りだ。
鈍い月光に照らされた教室は少し悲壮感を漂わせる。


「帰るぞ。」

「う、うん!!」


いつもと同じ台詞。
そしてこのまま別れ道まで無言の帰路。

別れ道に差し掛かると、三橋は笑顔で「じゃあ、また、明日っ」と俺に告げる。

お前は何でそんなに普通でいられるんだ。俺は、無理だ。
こんなに好きなのに、叶わない恋なのだ。
俺にはお前の心を奪おうとするほどかっこいい奴ではない。


「っ…くそ」


三橋の背中が見えなくなったと共に吐き出す苛立ち、そして、涙。

こんなに涙で頬を濡らして、お前を嫌いになりたくても、嫌いにはなれない。
バッテリーとしても、級友としても、好きな奴としても、お前が…。




end




(阿部は今日も枕を濡らす)







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