(!)作者の足りない頭で書いたギャグ仕様?の作品です。








「なあ、栄口。
 お前って、水谷のこと好きなのか?」

花井がふと口にした一言。
栄口は「へ?」と少し驚いた様子で水分補給を止めた。


「い、いやあ…なんか最近仲いいよなって…」


只今部活の真っ最中。
花井と栄口は交代で休憩中。
もう一人の休憩中である沖はぐったりとベンチに倒れこんでいる。


「ま、まあこんなのいきなり聞くの変なんだけどさぁ…」

「確かに、いきなりだね…」


栄口の苦笑いに花井も苦笑いで返す。

何故こんなことを聞いているかと言うと、水谷本人かた土下座付きで聞いてくれと頼まれたからである。花井の性格的には断りきれず、それに約束を忠実に実行中。
きっと同じクラスである阿部なら断固拒否だろうし、万が一引き受けたとしても面白がって実行にまで移さないであろう。
こういう時に、あの阿部の性格が羨ましい。


「で、でさぁ…どうなんだよ、水谷のこと…」


つか俺何聞いてんだよって話じゃねえか。
男に男のこと聞いてどうすんだよ、つか気持ち悪いだろコレ。
ぜってぇ栄口ドン引きだろ…水谷なんかの約束を何忠実に守ってんだ俺。

あとになって後悔しても遅く、目の前には困惑気味の栄口。


「…う、うーん…水谷かぁ…まあ、嫌いじゃないよ?」


頬の汗を拭いながら答える栄口。
しかし何処か照れくさそう。


「水谷のふざけているようで、でもちゃんといけない事と良いことの分別がついてるところとか。あと!友達のことだって、絆とかそういうの大切にする性格だしさ。そういうところ、好きかな。水谷のこと。」


俺、日本語変だよね、と言い訳しながら照れて言う栄口の姿がとても愛おしく感じてしまった。そして、のちに後悔の念がやってきた。


「そか…そりゃよかった…」

「え、何。どうしたのさぁ、いきなり〜」

「いやぁ〜それは…」

「ねぇ、何なのさ!花井!」

「あははは…」


『花井!絶対、俺が聞いたってことは言わないでよ!!』


あんのバカ、俺はこのあとどうすればいいとか考えとけよ。
何だよ、この変な空気。
ベンチに倒れこんでいる沖の隣で、変な会話をする2人。

気まずいにも程があるだろう。


「…」

「…」

「…」

「花井…もしかして…」

「え…?」


突然の言葉に栄口を真っ直ぐ見つめる。


「もしかして、だけど…
 花井って………






 俺のこと、好きなの…?」




「へ…?」



純粋な照れ顔から発せられた言葉に変な間を作ってしまった。
つか、今栄口の口から何て言った?す、好き?この俺が?!栄口を!?


「ち、違う!俺は…!!!」

「で、でも…何で、そんなこと…」

「だから、これは……」


『花井!絶対、俺が聞いたってことは言わないでよ!!』


頭にチラつくバカの言葉。
どうしればいいんだ、この状況。


「じ、実は…えっと……」

「…じ、つは?」


『…俺が聞いたってことは言わないでよ!!』


俺は知らないからな!クソレフト!!!


「実は、俺、お前のこと好きでさぁ。ずっと片思いしてました。」


俺のこの最高の大根役者並みの棒読み。
つか、今日ってエイプリル・フールじゃねぇか!よし、これだ!!


「お前のこと好きで、こんなこと聞いちまった。
 で、お前水谷と仲いいからさぁ…どうなの?」


あとで、「実は今日ってエイプリル・フールだろ。なので、阿部を筆頭に色んな奴を騙そうぜという企みだったんだよ。お前騙されたな!あはは!」と、阿部を犠牲にして愉快に言えば何とかなるだろう。

と、花井は最高の言い訳を見つけて、軽い優越感を感じながら答えを待つ。


「っ!?」


言い訳を考え終わった後の栄口の顔は真っ赤で、口を両手で押さえて、何故か乙女オーラが放たれている。





「俺、水谷なんかまったく興味ないんだ!実は…ずっと…花井が好きだったんだ!!」





「え…」


頭の中が真っ白になるってこういうことなんだろうな。
栄口が…俺のこと…好きだと!!


「え、ちょ…!…まじで?」

「う、うん…」


おいおい待て、今休憩中だよな。
もう5分程で練習に参加しなくちゃいけねぇんだけど…何だ、この状況。
は?え?なんつーか、周りから見れば、両思いってこと?
うっそだろー!え?まじで言ってんのか?栄口?
うっわー…どうしよ…取り返しつかねぇよ…水谷、阿部でもいい助けて…。

頭の中でフル回転で言葉を綴りながら、混乱する花井。


「俺、ずっと花井だけ見てたんだ…花井の主将姿、花井のバッター姿、花井の投手姿、捕手姿…全部見てたんだ…」


花井は絶句したまま呆然としていた。


「かっこいい花井に、気がついたら惚れてた…好きなんだ…花井」


俺…どうしてこんなことになったんだろう。
もう野球できねぇよ、こんな状況になっちゃったら。
主将?投手?捕手?え…かっこいい?
うっわーもうあれだよ、ホモ道まっしぐらなんだ…俺の人生もここで…。


「くくく…」


すると、どこからか笑い声が聞こえて振り向くと、そこには沖がいた。
ベンチに仰向けになり、帽子で笑う顔を隠している。


「沖…全部聞いてたのかよ…」

「くく…いやさぁ…!ねぇ栄口っも、もういいんじゃないっ?ふひひ!」

「ぷぷ!そ、そうだね!これ以上したら、花井が可哀想だもんね!」

「え…何のことだよ?」


沖は立ち上がって栄口の隣に座った。


「実はさぁ、今日ってエイプリル・フールでしょ?」

「ああ…」

「なので、今までの会話は嘘!」

「あ、あぁ…って、え?」


そう、今日はエイプリル・フール。4月1日。
みんなが誰かに嘘をついていい日。


「え…じゃあ…栄口が俺のこと好きってのも…」

「勿論だろ!!ったく…」

「水谷が栄口のことが好きってところからもう嘘の始まりなんだよ!」


沖の爆弾発言に絶句を通り越して、羞恥が生まれた。


「じゃあ…水谷も…」

「うん!共犯!つか、部員みんなが共犯だよ?」


そうして、練習に励む部員たちを見ると、みんなが俺のほうを向いてニヤついていやがる。
あの三橋は、少し申し訳なさそうに笑っているが。


「まあ、阿部が主犯だけどね!あはは」


主犯の阿部を見ると、マスクの下で厭な笑みを浮かべてこっちを見やがった。


「え、まじで…」

「「花井、騙されたね!」」


愕然と落ち込む花井。
すると休憩時間が終わり、次の休憩するメンバー水谷、阿部、西広がやってきた。
水谷と阿部は帽子で顔を隠し、笑いながら歩いてきた。


「よ、よお!花井!」

「おめぇら…」

「まあ、楽しかったな、クソレ。」

「クソレって言うなよ!!」


2人の嫌味の多いやりとりの後ろで、西広も苦笑いを浮かべている。
そんな西広の気の使った笑いに救われる。


「花井は真面目だから、騙すの簡単だったねぇ〜」

「ま、さすが主将の貫禄だな。」

「何が、貫禄だよ…くっそ…」


「花井」


「何だよ、阿部。」


阿部は俺に近づいて、耳元で呟いた。




「先読みされたな、お前」




バレていた。
やっぱ色んな物事に対処することのできる捕手は違うな、なんて阿部を褒めてやろうかなとも思ったが、恥ずかしさのほうが上まっていた。


「よーし、練習に行こうか、は・な・い!」

「栄口〜やめろよ〜!」

「くくく…」

「んの、阿部ぇえええ!お前覚えとけよ!!」


今日の練習は、いつも以上に汗が止まらなかった。
それもこれも後ろでニヤついている部員たちのせいだ。

しかし、今日はエイプリル・フール。
何もかも許さないといけないんだろうな…ああ、胃痛が。
そうして、俺たち野球部の4月1日はこう終わった。



end



(作者はこのサイトを閉鎖します。)

(すみません、嘘です←)






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