それから初めての雨
窓の外を見た。雨だった。
降水確率80%ってニュースで言っていた気がする。
教室には、傘を片手に文句を呟きながら帰ろうとする人でいっぱいだ。
水谷は鞄の中に入っているはずの折り畳み傘を頭の中に浮かべながら雨を見つめつづけた。
「水谷、今日部活ないってよ。」
見慣れた黒髪の垂れ目キャッチャーが怠そうに伝えてきた。
「えぇ、マジっ!?」
「ああ、何か急遽、学校側が部活中止だってよ。」
「うわぁ…で、花井は?」
「監督んトコ。」
そういうと、阿部は素っ気なく教室を出ていった。きっと、三橋のところだろう。
「(何で部活休みなんだろう…はぁ、今とても部活したい気分……)」
そう、心で呟きながら、土砂降りになってきた外をまた眺めた。
視線を下に向けると、昇降口から様々な色をした沢山の傘が外へ流れていく。
「はぁ………栄口…」
『水谷…ごめんね…』
栄口は目に涙を浮かべながら、水谷に小さく謝罪した。
そんな栄口の姿に『な、何で、栄口が謝るの…!!』と、動揺を隠せずにいた。
『あ、当たり前だよねっ!!…いきなり男から告白されたら……』
『っ…!!』
『…こっちこそ、ごめんね、栄口……ありがとう…。』
と、背中で小さな泣き声を聞きながらその場を去った。
それ以来、栄口とは話さなくなった。
「はぁぁ〜……」
外は雨、部活は急遽中止。フラれたばかりの水谷としては、とても最悪な状況だ。
「………」
昇降口からの傘の流れは、さっきより少なくなった。その流れの中に、阿部と三橋の姿を見つけた。
三橋の黄色い傘が、不自然に、小刻みに震えているが見えた。
そして、阿部の傘は大きく上下に揺れた。
「(あちゃ〜あれは三橋のこと怒ってんな。)」と、くすりと笑みを浮かべた。
すると、人気のなくなった昇降口から、一つの水色の傘が見えた。
水谷は、目を見開いて、その傘を目で追った。
すると、その水色の傘が止まった。
そして、水色の傘は振り返った。
水色の傘の中には、栄口がいた。
栄口は振り返ると、まっすぐ7組の教室を見つめた。
そして、バッチリと視線が絡んだ。
俺は呆然と栄口を見つめて、栄口もびっくりしているようだった。
数秒間、見つめ合った後に、栄口が目線を元に戻した。そして、傘が軽く揺れた。
すると、昇降口からモスグリーンの傘が現れた。
モスグリーンの傘は、水色の傘の隣に立って歩き出すと、水色の傘も一緒に歩き出した。
その瞬間、改めて恋の終わりを知らされた。
雨の音が、厭に耳に木魂した。
モスグリーンの傘が、巣山だってことは、もうとっくの前に知っていた。
栄口たちの姿が消えた道を見つめながら、水谷のため息が、誰もいない教室に響いた。
end
――――キリトリ――――
水谷→栄口→←巣山?
もうよくわかんないけ
ど、水谷の悲恋話です
今日、土砂降りの中で
考えた作品です。
栄口は巣山が好き。
だからフラれました。
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