「…阿部くん?」
「田中さんと北沢さん?」
「私たちの名前知ってるのぉ?!」
「ま…まぁ…一応クラス同じだし…」
「嬉しい〜!!!」
「阿部くんが野球部以外のクラスの子の名前覚えてるとかいっがーい!!!」
「はぁ?何それ、喧嘩売ってる?」
と、阿部くんは笑いながら話す。
そんな阿部くんの姿に、俺は、嫌なモヤモヤ感を心に感じながら、7組を過ぎていった。
I do not necessarily like it
ガシャンッッ!!!
「はあ??!!おめぇ!!!自分が何言ってるか分かってんだろぉなあ!!!!!」
グラウンドに響き渡る怒声に、部員全員が振り向いた。
「っちょ…阿部!!!」
そこには栄口に押さえられた阿部と、俯いた三橋がいた。
「お前らぁ!!!何してんだぁ!!!」
と、花井が小走りで駆け寄ってきた。
阿部は花井を睨むように一瞥し、三橋に向き直した。
三橋はツンッと下を向いたままだ。
花井は阿部には話にならなさそうだと思い、栄口のほうを向いた。
「栄口、どうしたんだ。」
「っい…いやさぁ…「こいつっ!!俺に意見しやがったんだ!!?」
花井は「はぁ?」と溜め息混じりに呟いた。
「三橋が意見…?」
珍しいなぁ、と花井は心の中で呟き、三橋を見つめた。
「ちっ…俺の練習の仕方が気に食わねぇんだとよっ!!?」
「…はぁ…おい三橋、何で…」
阿部の覇気に少し胃の痛みを感じながら三橋に話かけると。
「っぅ…うっさい!!!!!ひぐっ!!!!!!!!」
次にグラウンドに三橋の怒声が響き渡った。
少し噛み気味の怒声は、栄口と花井以外の部員を驚かせた。
阿部も目を見開いて、口を開けて驚いていた。
「っひぐ…な、にさ!!!いっつも、阿部、く…勝手で…!!!俺の、話、聞いてくれた、て!!!いいじゃないかぁ!!!!」
叫んだ後に、タタタ…と三橋は走っていった。
田島が何かを叫んで三橋を追おうとしたが、花井がそれを止めた。
そして、栄口は阿部を離して、阿部はまだ驚いている様子で立ち詰めていた。
そんな様子の阿部に栄口は溜め息を一回ついて、阿部の肩に手を置いた。
「阿部、三橋のこと追い掛けなくていいの?」
「はぁ?何で俺が…」
阿部の答えに、栄口はまた大きく溜め息をついた。
グラウンドの隅で、田島と花井が揉めているのが見えた。
田島は、三橋を追い掛ける、みたいなことを言い、その言葉に花井は、お前は行かなくていい、と突っぱねる。
またその姿に栄口は、呆れ混じりの溜め息をついた。
「はぁー…もお!!」
そう言って、阿部の胸倉を軽く掴んだ。
「っぐ!!!」
小さな痛み声をあげた。
そして、目の前には栄口。
「何ッだよ!!//」
「阿部と三橋は!!バッテリーであって、恋人同士なんでしょ!!?」
「ちょっ!!声がでけぇって!!//」
(無視)「三橋が悪いのかもしれないけど、ちゃんと話し合わなくちゃダメでしょっ!!」
「………ちっ…//」
小さく舌打ちをして顔を真っ赤にさせた。
そうして、胸倉を掴んでいた手を離して、栄口は笑ってみせた。
「行ってきなよ…花井と監督には俺が言っとくから。」
「……わーたよっ//」」
そう頭を掻きながら言い放つと、三橋の走っていった方へ照れ臭そうに歩いて向かった。
そんな阿部の背中へ、栄口は笑みを交えて溜め息をついた。
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