警告!

シリアス;死ネタ;病気パロ





















遺書「さようなら」





真っ白な廊下の先に「1309号室 三橋廉」の病室があった。
花束に部員たちの書いた色紙を片手に、扉の前で一息ついて扉を開けた。


「あっ……阿部、くん……」


入った瞬間に、三橋の声と笑顔が迎えてくれた。


「よっ…あ、起きなくていいよ…」


「ご…ごめん、ね…」


三橋は申し訳なさそうに、苦笑してベッドに再び寝た。

その様子に「ふぅ」と息を吐いて、ベッドの隣に座った。
ベッドの真横の机に花束を置き、色紙を三橋に手渡した。


「これ、みんなから。」


「へ…?……あっ…みんな…」


「田島なんか、めっちゃくちゃ心配してて、今日の見舞いも行きたがってたんだけどな…」


「…練習、いいの…?」


「いいんだよっ!…主将命令だし、俺自身、お前に会いたかったから。」


そういうと、三橋は顔を少し赤らめて、照れ笑いをした。


「…三橋……最近調子はどうだ?」


「う…ん……い、いいよ…」


嘘だ、と阿部は察した。

だって、さっきから反対側の机に痛み止めの薬が置かれているから。
そして三橋の顔は、少し前に比べて、別人のように細くなっているから。


「…そっか…。」


しかし、阿部は応を唱えた。
そんな阿部の様子に、小さく笑う三橋。


「………。」


「………。」


そのあとは、ずっと無言だった。
お互いに下を向いて、黙ったままになってしまった。

そして、面会時間が終わりに近づいた時。





「…阿部、くん…」


三橋は沈黙を破るように言葉を綴った。


「…俺、…阿部、くんと…バッテリー、でよかった よ…」


阿部は、三橋の言葉に目を見開いて、黙って聞いていた。


「ずっと…憧れて、いた んだ…阿部くん、に…」


三橋の手に握られた布のシワが広がった。


「ふっ……もっと、投げたか、た…」


頬に一筋の涙が流れた。
阿部は咄嗟に三橋に抱き着いた。


「っぁ…あ、阿部く……」


「…また、野球しよう……」


「……っ…」


「絶対だぞ!…俺の命令に…首を横に振るな……」


阿部の腕の力が強まった。
三橋は少し痛みを感じるくらいに。

そして、三橋は小さく「うん」と首を縦に頷いた。



そうして、時計は、面会時間を15分も過ぎていた。
阿部は時計を横目に三橋から離れた。



「三橋、また来るから…次はみんなと一緒に…」


阿部の言葉に、ニコリと笑ってみせた。






阿部が病室を出ようと扉に手をかけた時。


「阿部、くん…」


三橋の声に振り向くと、三橋の顔は苦しそうな表情で笑っていた。





「¨さようなら¨」




そういって、手を振っていた。
阿部も名残惜しげに、手を振り返し、病室をあとにした。









一週間後。

三橋は、眠るように亡くなった。



『あの時の「さようなら」は、自分に対する最後の永遠の別れを綴るような遺書に感じた。』

阿部は天を仰いで呟いた。





end







――――キリトリ――――


お題提供サイト「joy」様
から助けて貰いました。






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