Ofuri long novels | ナノ
04
便所、教室、職員室を順番に足速に探したが三橋の姿はなかった。
「あいつ...どこに行きやがった...」
阿部は、さっきから込み上げる苛々と怒りを今にも吐き出したいという気持ちにかられた。
早く帰りたい、そればかりが頭の中を回る。
気がつくと、体育館まで来ていた。
体育館で活動していた、バレー部やバスケ部などはもういなかった。
(花井たちも、もう帰ったんじゃねぇかなぁ...はぁ...)
仲間への気遣いを考えながら、体育館の扉の前までやってきた。
まだ雨は降り止まない。
滔々たる景色が続いている。
(こんな所にいるわけねぇよなぁ..)
そして、次に向かおうとした時だった。
「三橋くん。」
ふと、そんな声が耳に響いた。
女子の声で、体育館の裏から聞こえた。
阿部は不思議に思って、体育館裏に向かった。
角を曲がると、体育館裏に出る所まで歩き、こっそりと角から覗いた。
そこには、黄金色のふわりとした髪が印象の、行方不明だった三橋がいた。
あと三橋の前には、俺と同じクラスの女子がいた。
(何してんだ...あいつら?)
そして、雨が降っているのにはっきりとある言葉が聞こえた。
「...私、三橋くんのことが好きなんですっ!付き合って下さいっ!!」
俺は唖然とした。
あの三橋が女子から告白されているのだ。
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