Ofuri long novels | ナノ




34




「…え……」


阿部が持っていたコップが傾きお茶が糸のように流れ落ちる。


「っな…何て…」


ポタ…ポタポタ………ポタポタポタ……。



「…野球、をやめ

ダンッ!!!!!???

っ……!!??」




「…三橋…もっかい言ってくれるか…?」


叩きつけれたコップは粉々に砕けて、無数の細かい破片が阿部の手を赤に染める。
溢れたお茶の上に赤の波紋が流れる。


「……あ、阿部、く…、ち、ちっ血が「なあ…三橋…」


三橋は目の前の赤に声が震わせて恐怖と驚愕を含んだ声で阿部を見る。

声を遮った阿部はバリバリと破片が擦れた音をさせながら赤い手から破片を溢していく。お茶と血に濡れたコップを床に置いて、三橋を見つめた。



「三橋は…今さっき辞めるって言ったんだよなぁ…?」



鋭い阿部くんの瞳が俺を捕らえていた。その瞳に、俺は体を強張らせた。



「何で、辞める訳?」



手からは今だに血が止まらずに滴り落ち続ける。痛いはずなのに、阿部くんの表情は狂気を含んだ無のままだった。


「っぅ…ぁ……」


そんな阿部くんの姿に身体が小刻みに震えてしまっていた。そして、阿部くんを直視出来ないまま目を泳がせることしか出来なかった。

無機質な秒針の音が厭に部屋に響く。
外からは、車のエンジンをふかす音が聞こえてきた。


「っぁ…ぃや…「早く言えよ。」


ギリッ…、阿部の手は拳を作って、力強く握っている。
手の皺からは、血がドクドクと溢れる。


「っひ……!!?」


「早く言えッ!!!??」

ガシャン!!!!





三橋の背後の白い壁。

目をつむった三橋の頬に感じる冷たい感覚。

目を開ける。

恐る恐る頬に触れると、

手には冷たいが。

振り向くと、




白い壁にはガラスの破片が刺さり、が赤い斑点を描き出していた。





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